ケアマネジャー試験で、恐らく最も難易度が高く正答率の低い設問といえば「高齢者や介護を取り巻く状況のデータ」についてかと思われます。
ケアマネジャー試験対策のテキストには、記載されている内容のボリュームが少ないものも多くみられます。
そのため、受験者はデータを自身で調べなければ最新の状況の答えを得ることはできません。
私も受験時には様々なデータを調べましたが、その調査に要する時間も多く取られました。
この記事では、調べるのが少々面倒な高齢者や介護を取り巻く状況のデータについて、ケアマネジャー試験に出題されたことのあるものを中心にまとめています。
試験勉強にご活用ください。
高齢者や介護に関するデータ
第一号被保険者の数
第一号被保険者は令和6年度3月時点では約3,589万人です。
このうち要介護(要支援認定)を受けている人の割合は19.4%となっています。
第一号被保険者の給付費
第一号被保険者の介護保険の給付費は、令和2年度の厚生労働省の報告では全国平均で23,557円となっています。
介護保険の保険給付費
令和6年度3月時点では、介護保険給付費の総額は、8,940億円となっています。
居宅(介護予防)サービス費 | 4,299億円 |
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施設サービス費 | 2,754億円 |
地域密着型(介護予防)サービス | 1,455億円 |
高額介護(介護予防)サービス費 | 227億円 |
高額医療合算介護(介護予防)サービス費 | 5億円 |
特定入所者介護(介護予防)サービス費 | 201億円 |
介護保険給付費の占める割合は居宅サービス(介護予防)費が最も多く、40%以上を占めています。
施設サービス費と地域密着型サービス費を足しても、居宅サービス費より少ない状態が続いています。
各サービスの利用者の数
居宅サービス | 約423万人 |
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施設サービス | 約96万人 |
地域密着型サービス | 約91万人 |
- 居宅サービスの利用者数は約423万人です。この数字には、在宅で介護や介護予防サービスを受けた人々が含まれています。
- 施設サービスの利用者数は約96万人です。これには介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設、介護医療院の利用者が含まれています。
うち「介護老人福祉施設」が約57万人、「介護老人保健施設」が約34万人、「介護医療院」が約4万人となっています。 - 地域密着型サービスの利用者数は約91万人です。
どのサービスも利用者数は増加傾向であり、今後も増加が見込まれています。施設サービスでは介護老人福祉施設の利用者が最も多く、介護医療院の利用者が最も少ないです。
要介護認定
要介護(要支援)認定者数は、令和6年度3月時点では約708万人です。
そのうち男性が226万人、女性が482万人となっており、女性の認定者の数が男性の2倍以上いることが分かります。
要介護認定者数 | 約508万人 |
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要支援認定者数 | 約200万人 |
合計 | 約708万人 |
要支援 | 200万人 |
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要介護1 | 146万人 |
要介護2 | 118万人 |
要介護3 | 92万人 |
要介護4 | 89万人 |
要介護5 | 59万人 |
要介護認定を受けている者では要介護1の者が最も多く、次いで要介護2の者が多くなっています。
最も少ないのは要介護5の者です。
要介護認定を受けている者のうち後期高齢者(75歳以上)が占める割合は80%を超えており、これは上昇傾向が続いています。
前期高齢者(65歳~74歳)の占める割合は全体の10%程度です。
特に80歳以上の者の数の増加傾向が目立ち、今後も増加が見込まれます。
第二号被保険者のうち、要介護認定を受けている者は全体の2%程度です。年々数が減少しています。
介護(支援)を受ける必要となった原因
要介護度 | 第1位 | 第2位 | 第3位 |
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要支援全体 | 関節疾患 | 脳卒中 | 骨折や転倒 |
要支援1 | 年齢による衰弱 | 関節疾患 | 骨折や転倒 |
要支援2 | 関節疾患 | 骨折や転倒 | 年齢による衰弱 |
要介護全体 | 認知症 | 脳卒中 | 骨折や転倒 |
要介護1 | 認知症 | 脳卒中 | 骨折や転倒 |
要介護2 | 認知症 | 脳卒中 | 骨折や転倒 |
要介護3 | 認知症 | 脳卒中 | 骨折や転倒 |
要介護4 | 脳卒中 | 骨折や転倒 | 認知症 |
要介護5 | 脳卒中 | 認知症 | 骨折や転倒 |
支援が必要になった理由のうち最も多いのが関節疾患で、介護が必要になった理由として最も多いのは認知症となっています。
要介護4や要介護5では、脳卒中が原因で介護が必要になった人が多くなっています。
世帯構造及び世帯類型の状況
令和4年度の時点では、65歳以上の者がいる世帯では、「夫婦のみ世帯」が最も多く、次に「単独世帯」、「親と未婚の子のみの世帯」が多くなっています。
また65歳以上の者がいる世帯のうち、65歳以上だけの世帯では、「単独世帯」が最も多く、次に「夫婦のみ世帯」が多いです。
65歳以上だけの世帯のうち、単独世帯の男女の割合は、男性が35.9%、女性が 64.1%となっています。
さらに要介護認定を受けている者が居宅内にいる世帯では、「核家族世帯」が最も多く、次に「単独世帯」、「その他世帯」が多くなっています。
このうち核家族世帯および単独世帯の割合は上昇傾向であり、三世代世帯の割合は年々低下しています。
世帯 | 1位 | 2位 | 3位 |
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65歳以上の者がいる世帯 | 夫婦のみ世帯 | 単独世帯 | 親と未婚の子のみ世帯 |
65歳以上の者だけの世帯 | 単独世帯 | 夫婦のみ世帯 | |
要介護認定を受けている者が居宅にいる世帯 | 核家族世帯 | 単独世帯 | その他世帯 |
また要介護認定を受けている者が居宅にいる世帯のうち、要介護度の低い者がいる世帯は単独世帯の割合が多く、要介護度の高い者のいる世帯は核家族世帯や三世代世帯の割合が多い傾向にあります。
主な介護者
主な介護者として最も多いのは「配偶者」、次に「子」となっています。
同居の主な介護者の介護時間については、要支援1から要介護2までは「必要なときに手をかす程度」が多くなっています。
要介護3以上では「ほとんど終日」が最も多くなっています。
このうち「ほとんど終日」介護をしている者の男女比は男性が25%、女性が75%です。
介護者の属性としては「配偶者(女性)」が最も多く、次に「子(女性)」、「配偶者(男性)」と多くなっています。
ビジネスケアラーの数の推移
2020年時点での国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口中位推計」のよると、40~44歳の層におけるビジネスケアラーの人数は33万人であるのに対し、45~49歳の層における人数は65万人となっています。
さらに45~49歳の層におけるビジネスケアラーの人数は、2030年時点に171万人となると見込まれており、およそ6人に1人が介護をしている状態となると言われています。
認知症
近年では、65歳以上の者の認知症及び軽度認知障害の有病率は大きく増加しています。
「認知症及び軽度認知障害の有病率調査並びに将来推計に関する研究」によると、2025年の認知症患者の推計値は470万人以上といわれています。
軽度認知障害の人は558万人といわれています。
この数は年々増加し、2060年まで増加が見込まれ、どちらも600万人を超える見込みです。
認知症のうち、最も多い認知症の類型は「アルツハイマー型認知症」であり、およそ半数を占めています。次いで「血管性認知症」、「レビー小体型認知症」といわれていますが、これらは報告によっては順位が前後しています。