ココがポイント!成年後見制度についてのケアマネ試験対策

この記事の学習優先度は”非常に高い”です。

成年後見制度はほぼ毎年ケアマネ試験で出題が見られるポイントの1つです。
申し立て方法や3つの類型など覚えるべき内容が多く、苦戦を強いられている受験生も少なくないのではないでしょうか。

一見どこを重点的に勉強すればいいか分かりづらい成年後見制度ですが、この記事ではケアマネ試験対策としての覚え方や覚えるべきポイントの優先順位について解説していきます。

成年後見制度がどのような制度か簡単に説明すると、判断能力が不十分な人の財産の管理や契約・手続きの代行などを、代理権や同意権・取消権が付与された成年後見人等が行う仕組みです。

認知症の人、知的障害のある人、精神障害のある人などが制度の主な利用対象です。

成年後見人等が行う具体的な仕事については次の2つがあります。

成年後見人等の職務
  1. 財産管理 → 成年被後見人等の財産の管理や、財産の使用
  2. 身上監護 → 契約や入院・入所手続きを本人に代わって行う

財産管理は、すべて成年被後見人のために行わなければなりません。
身上監護は、介護サービスの契約手続きなどを行うものですが、成年後見人等が直接成年被後見人等に対して介護を行うことではない点に注意しましょう。

成年後見制度には、法定後見制度任意後見制度の2つがあります。

法定後見制度は、すでに判断能力が低下している人に対して家庭裁判所が成年後見人等を選任する制度です。
成年後見人等には次にような者が選任されます。

成年後見人等になる者
  1. 親族
  2. 福祉・法律関係者
  3. 公益法人など

親族が成年後見人となる割合は年々減少しており、近年では7割超が福祉・法律関係者が選任されていると言われています。

また家庭裁判所への申立ては次の者が行います。

法定後見制度で申立てを行う者
  1. 本人
  2. 配偶者
  3. 四親等内の親族
  4. 検察官等

この者以外にも、四親等内の親族がいない場合など65歳以上の者であって本人の福祉を図るために特に必要があると認められる場合には、市町村長が申立てを行うことができます。

法定後見制度の類型

法定後見制度は、被後見人等の判断能力の程度に応じて次の3つの類型に分かれています。

類型
  1. 成年後見人
  2. 保佐人
  3. 補助人

それぞれの違いは次のようになります。

成年後見人保佐人補助人
被後見人等の判断能力判断能力を欠く判断能力が著しく不十分判断能力が不十分
代理権
取消権
同意権×

代理権

代理権とは、成年被後見人の代わりに財産に関する法律行為を代理で行うことができる権利です。
成年後見人には選任された時点で付与されています。
一方、保佐人と補助人では、成年被後見人等の同意があり家庭裁判所に請求し審判を受けて付与されます。

取消権

成年被後見人が行った、自身に不利な契約などを取り消すことができる権利です。
保佐人の場合には同意権が付与されているため、保佐人の同意なく行った行為に対して取り消しを行うことができます。
補助人は家庭裁判所に請求し審判を受けて付与されます。

なお取消権は、日常生活上の買い物(食材など)については取り消すことができません。

同意権

成年被後見人等が行う、重要な行為について同意をする権利です。
成年被後見人は、代理の際に本人の同意がいらないため付与されていません。
保佐人は選任された時点で付与されています。
補助人は家庭裁判所に請求し審判を受けて付与されます。

任意後見制度は、判断能力のあるうちに後見人等になってもらう人や、行ってもらう事務をあらかじめ契約によって決めておく制度です。
任意後見の契約は公正証書で行います。これ以外は無効です。

任意後見の契約をした後に本人が判断能力が不十分な状態となった場合、家庭裁判所任意後見監督人の選任を申立てます。その申立てが完了すると任意後見が開始となります。

やぴぃ

任意後見監督人は任意後見人が不正していないかチェックする人だよっ

なお任意後見監督人は配偶者や本人の兄弟姉妹、直系の親族等はなることができません。
これは任意後見人と結託して行われる不正を防ぐためです。
任意後見人が仮に不正をした場合、後見監督人は家庭裁判所に報告を行います。
その報告のもと、家庭裁判所は任意後見人の解任を命じることができます。

成年後見制度利用支援事業は、介護保険法上では地域支援事業のうちの任意事業です。
ただし、障害者総合支援法上では地域生活支援事業のうちの必須事業です。
どちらも市町村が行う事業ですが、このことから市町村としては必ず成年後見制度利用支援事業を行わなければならないということになります。

このことは第22回試験再試験にも出題されているため、必ず覚えましょう。
福祉サービス分野の成年後見制度や障害者総合支援法に関する設問で、「成年後見制度利用支援事業は市町村の必須事業である。」という選択肢が出題されたら×としないよう注意してください。

成年後見制度に関するケアマネ試験での出題は、過去7年間で6回出題されています。
過去にはこのような出題がされていました。

成年後見制度について正しいものはどれか。3つ選べ。

1 成年後見人の職務には、身上保護(身上監護)と財産管理が含まれる。

2 後見開始の申立は、本人の所在地を管轄する地方裁判所に対し行わなければならない。

3 成年後見制度の利用の促進に関する法律では、国の責務が定められている。

4 法定後見制度は、本人の判断能力の程度に応じて、後見と補助の2類型に分かれている。

5 成年後見制度利用促進基本計画では、権利擁護支援の地域連携ネットワークづくりが必要とされている。

解答をみる

正解 1、3、5

第26回介護支援専門員実務研修受講試験 問58

成年後見制度について正しいものはどれか。2つ選べ。

1 任意後見制度では、判断能力を喪失した人に、保佐人や補助人をつけることができる。

2 都道府県知事は、65歳以上の者につき、その福祉を図るため特に必要があると認めるときは、後見開始の審判の請求をすることができる。

3 本人と任意後見受任者の同意があれば、公正証書以外の方法でも任意後見契約が成立する。

4 成年後見制度の利用の促進に関する法律に定められた基本理念には、成年被後見人等の意思決定の支援と身上の保護が適切に行われるべきことが含まれる。

5 成年被後見人の法律行為は、原則として、取り消すことができる。

解答をみる

正解 4、5

第25回介護支援専門員実務研修受講試験 問59

成年後見制度について正しいものはどれか。3つ選べ。

1 親族も成年後見人になることができる。

2 市町村長は、四親等内の親族がいる場合には、後見開始の審判の請求をすることはできない。

3 その理念の一つとして、成年被後見人等の自発的意思の尊重がある。

4 成年後見人は、家庭裁判所の許可を得ずに、成年被後見人の居住用不動産を処分することができる。

5 後見開始の審判は、本人も請求することができる。

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正解 1、3、5

第24回介護支援専門員実務研修受講試験 問60

成年後見制度について正しいものはどれか。3つ選べ。

1 本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意が必要である。

2 後見開始の申立は、本人の所在地を管轄する地方裁判所に行う。

3 市町村は、当該市町村における成年後見制度の利用の促進に関する施策についての基本的な計画を定めるよう努めることとされている。

4 後見開始の審判は、事実上婚姻関係と同様の事情にある者も請求することができる。

5 任意後見人の配偶者、直系血族及び兄弟姉妹は、任意後見監督人となることができない。

解答をみる

正解 1、3、5

第23回介護支援専門員実務研修受講試験 問59

成年後見制度について正しいものはどれか。3つ選べ。

1 成年後見制度の利用の促進に関する法律では、国民が成年後見制度を利用する義務を定めている。

2 成年後見制度の利用の促進に関する法律では、成年被後見人の意思決定の支援を定めている。

3 65歳以上の者につき、その福祉を図るため特に必要と認めるときは、市町村長は、後見開始の審判の請求をすることができる。

4 親族が成年後見人に選任される割合は、年々増加している。

5 任意後見契約は、公正証書によってしなければならない。

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正解 2、3、5

第22回介護支援専門員実務研修受講試験 問60

1 任意後見制度では、都道府県知事が、本人の親族の中から任意後見監督人を選任する。

2 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、配偶者も、後見開始の審判を請求することができる。

3 成年後見制度の利用の促進に関する法律では、成年後見制度の基本理念として、「ノーマライゼーション」、「自己決定の尊重」及び「身上の保護の重視」の考え方を示している。

4 市町村は、後見、保佐及び補助の業務を適正に行うことができる人材の育成及び活用を図るため、必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

5 法定後見制度では、検察官及び市町村長のみが後見開始の審判を請求することができる。

解答をみる

正解 2、3、4

第21回介護支援専門員実務研修受講試験 問58

過去問を見てみると、比較的出題が目立つのが「後見開始の審判や申立て」についての選択肢です。
「誰が後見開始の申立てを行うことができるか」については最優先で学習を進めておくことをおすすめします。

また、成年後見制度での申立ては家庭裁判所に行います。「地方裁判所」は制度に関係ないため、このワードがケアマネ試験で選択肢に出現したら条件反射で誤りと判断してもいいでしょう。

そのほか、制度に関する内容が幅広く出題されていますが、保佐人や補助人の権限については出題頻度が低い傾向にあります。そのため学習に余裕がなければ、このポイントについては後回しにしてもいいかもしれません。

ここまで成年後見制度に関するケアマネ試験対策と学習の優先度について解説しました。
成年後見制度に関する設問は過去に出題された内容と類似した選択肢の出題も多いため、効率的に学習を進めるならば過去問を何度も解くことがオススメです。
また一問一答や問題集などで、想定されるような設問に積極的に取り組むのもいいかもしれません。

テキストベースでは理解しづらい場合は、ぜひアウトプットを活用し学習を進めてみてください。

皆さまがケアマネジャー試験に合格できるよう、祈願しております。

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この記事を書いた人

ケアマネでまんねん運営者
主に問題の作成と解説作成担当。
ケアマネジャー試験の独学による学習をサポートし、みなさんが最短で合格するため、実践問題や一問一答、解説について書いています。