住所地特例といえば、みなさんは何を思い浮かべるでしょうか?
ケアマネ試験の受験生は「住所地特例対象施設」と「住所地特例=前に住んでいた住所地の市町村が保険者」とさらっと覚えているかもしれません。
実は住所地特例は、ケアマネジャーとして実務に就いたとき、適切な理解をしていなければ非常に困るポイントの1つです。
試験勉強の内容の多くは試験後にはあやふやになってしまうのが常ですが、この記事の内容は必ず忘れないように覚えておきましょう。
この記事では住所地特例のしくみや流れ、ケアマネジャーが行う手続きなどを解説していきます。
住所地特例とは
住所地特例とは、前住所の住居とは別の市町村の住所地特例対象施設に入所しそこに住所を移した場合に、前住所の市町村が保険者となる制度です。
住所地特例の最大のポイントは、住所地特例対象施設のある市町村の地域密着型サービスや地域支援事業を、住所地特例対象施設に引っ越してきた被保険者が受けることができる点です。
通常、地域密着型サービスはその市町村の被保険者じゃないと受けられないのっ
住所地特例対象施設
介護保険における住所地特例対象施設には次のようなものがあります。
介護保険施設 | ・介護老人福祉施設 ・介護老人保健施設 ・介護医療院 |
---|---|
特定施設 | ・介護付き有料老人ホーム ・特定施設入居者生活介護の指定を受けているサービス付き高齢者向け住宅 ・軽費老人ホーム ・養護老人ホーム |
大まかに分けて、介護保険施設と特定施設が住所地特例対象施設です。
また、老人福祉法上の養護老人ホームも特定施設に含まれています。
- 地域密着型介護老人福祉施設
- 特定施設入居者生活介護の指定を受けていない有料老人ホーム
- 特定施設入居者生活介護の指定を受けていないサービス付き高齢者向け住宅
これらは住所地特例対象施設ではありません。
住所地特例に関する届出
別の市町村にある住所地特例対象施設に入所(入居)する場合、被保険者は引っ越し前の市町村(保険者)に転出届と住所地特例適用届を提出します。
住所地特例対象施設を退所して、また別の市町村の住所地特例対象施設に引っ越す場合には、保険者である市町村に住所地特例変更届を提出します。
また、住所地特例対象施設から退所し元の住居(前の住所)に戻る場合も、保険者である市町村に転入届と住所地特例終了届を提出します。
ケース | 提出先 | 提出する届出 |
---|---|---|
住居から別の市町村にある住所地特例対象施設に入所(入居) | 保険者 | ・転出届 ・住所地特例適用届 |
住所地特例対象施設を退所し、別の市町村の住所地特例対象施設に引っ越す | 保険者 | ・住所地特例変更届 |
住所地特例対象施設から退所し元の住居(前の住所)に戻る | 保険者 | ・転入届 ・住所地特例終了届 |
住所地特例に関する届出は、「保険者に提出」と覚えておいてねっ
住所地特例のケース
実際にケアマネジャーとして遭遇する住所地特例のケースは次のようなものがあります。
分かりやすいよう、図解にしています。
上記が最もシンプルな住所地特例のケースです。やや複雑になると次のようなケースがあります。
上記は住所地特例対象施設から別の市町村の住所地特例対象施設に引っ越すケースです。
この場合でも前の住所の市町村が保険者となります。
上記の図が複雑なケースです。
住所地特例対象施設に入所するも、住所を移した先が施設ではなく親戚等の家だった場合でその後別の市町村の住所地特例対象施設に引っ越した場合、保険者は住所を移した親戚等の家のある市町村となります。
ただしこのケースで紹介している「住所地特例対象施設に入所するが、住所を移した先は親戚等の家」は基本的に絶対にやってはいけない事例として青森県弘前市の資料で紹介されています。
これは本来、保険者とならないはずの住所地特例対象施設のある市町村がその費用(特定施設入居者生活介護費等)を負担することになるためです。
ケアマネジャーとして受け持っている利用者にこのケースにあたるような手続きを勧めてしまうと、バレたときに後でキツいお叱りを受ける可能性があるため絶対に避けましょう。
特定地域密着型サービス
住所地特例対象施設に入居している被保険者は、その施設がある市町村の地域密着型サービスを受けることができると先ほど解説しました。
実はすべての地域密着型サービスを受けることができるわけではなく、受けることができるサービスは決まっています。
住所地特例対象施設に入居している被保険者が利用できる地域密着型サービスを、特定地域密着型サービスといいます。特定地域密着型サービスは次の通りです。
- (看護)小規模多機能型居宅介護
- 地域密着型通所介護(療養通所介護を含む)
- 認知症対応型通所介護
- 夜間対応型訪問介護
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
これらには地域密着型介護予防サービスも含みます。
上記の表にない、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)や地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護は含まれません。
住所地特例と間違えやすいケース
ケアマネジャーの実務上、よく遭遇する住所地特例と間違えやすいケースがあります。
それが「今住んでいる市町村に住所を移していない(届出をしていない)で現在の住まいで生活している」ケースです。
このケースでは利用者から介護保険被保険者証を見せてもらうと、住所欄に現在の住まいと違う住所が記載されています。
ただ住所を移していないだけなので住所地特例適用被保険者にはなりません。
しかし、一見すると住まいと被保険者証に記載の住所が違うため、住所地特例適用被保険者と間違って判断してしまうことがあります。
この間違いを防ぐ場合には、住所欄と保険者欄の不一致を確認します。
なぜなら住所地特例適用被保険者の被保険者証は、必ず住所欄に記載されている住所と保険者が一致しません。
住所欄と保険者の市町村が一致する場合は、被保険者が住所を移していないだけなので注意してください。
これは利用者が利用できるサービスに関わってきますので、ケアマネジャーとして実務に就いた場合には誤って利用できないサービスを紹介しないようにしっかり把握しておきましょう。
おわりに
住所地特例はややこしい制度ですが、ケアマネジャー試験勉強で学ぶポイントをしっかり把握しておくと、いざ遭遇したときに苦労が何倍も違います。
ただ試験対策として勉強するだけでなく、実務に就く予定のある人は今のうちからその内容を整理できるようにしておきましょう。