この記事の学習優先度は”高い”です。
ケアマネ試験で毎年非常に高い頻度で出題されている生活保護制度。
介護保険法以外の法制度であるため一見難しいように感じますが、実は試験に出題されるポイントはパターンがある程度決まっています。
ただ、生活保護制度は試験だけでなくケアマネの実務でも生活保護制度は深くかかわる制度です。
そのため、なるべく試験に出題されるような基礎的なポイントは覚えておくことをオススメします。
この記事では、ケアマネ試験で重要となるポイントを解説していきます。
生活保護制度の概要
生活保護制度は、国の責任で生活に困窮する国民に対して保護を行う制度です。
実際に保護を実施するのは都道府県、市、福祉事務所を管理する町村です。
生活保護法には次の4つの原理が規定されています。
- 国家責任の原理
- 無差別平等の原理
- 最低生活保障の原理
- 補足性の原理
無差別平等の原理
すべての国民は、生活保護を受ける条件がそろっていれば無差別平等に保護を受けることができます。
保護を受けるに至った理由は問わず、経済的困窮にのみ着目して保護が行われます。
また、国民だけでなく永住権を持つなどの条件をクリアした日本国籍を持たない外国人も保護の対象です。
最低生活保障の原理
すべての国民は健康で文化的な生活水準を維持することが、生活保護法で保障されています。
補足性の原理
補足性の原理とは、分かりやすく解説すると「生活保護が行われるためには、利用できる資産や能力、資格その他あらゆるものを活用することが必要となる」ということです。
この原理のため、生活保護制度より他の法制度の給付や補償、賠償が優先され、それでも足りない場合にはじめて生活保護制度から給付されます。
仮に要保護者に収入があった場合には、厚生労働大臣が基準を定める最低生活費から収入を引いた金額が保護費として給付されます。
ケアマネ試験で最も出題があるため必ず覚えておきましょう。
保護の原則
生活保護は、保護の申請によって手続きが開始されます。
保護の申請は次の者が原則として行います。
- 要保護者
- 要保護者の扶養義務者
- 同居する親族
ただし、緊急的に保護の必要性が高い場合には保護の申請が無くても必要な保護を行うことができます。
なお保護は原則として世帯単位で行われます。ただし、世帯で行うことが適切でない場合には個人単位で行われることもあります。
扶助の種類
生活保護で行われる扶助は次の8つがあります。扶助によって給付方法が異なります。
扶助の種類 | 原則とした給付方法 |
---|---|
介護扶助 | 現物給付 |
医療扶助 | 現物給付 |
生活扶助 | 金銭給付 |
葬祭扶助 | 金銭給付 |
住宅扶助 | 金銭給付 |
生業扶助 | 金銭給付 |
教育扶助 | 金銭給付 |
出産扶助 | 金銭給付 |
このうちケアマネジャー試験で特に重要となるのは、介護扶助、医療扶助、生活扶助です。
それぞれについて解説していきましょう。
介護扶助
介護扶助は、介護保険制度の保険給付の対象となる介護サービスと同等のサービスを、要保護者に対し保障する扶助です。介護サービスの利用料の自己負担分(1割~負担の部分)は介護扶助から給付されます。
原則として現物給付です。ただし、住宅改修費や特定福祉用具購入費は金銭給付が行われます。
また介護保険の被保険者以外も給付の対象となることがあります。この場合は介護保険から給付がないため、介護サービスを利用した場合には全額介護扶助から給付されます。
主に介護扶助から給付されるものは次の通りです。
・居宅サービス利用時の自己負担分
・施設サービス利用時の自己負担分
・施設サービス利用時の食費
介護扶助から給付を受けるためには、居宅サービス計画書や施設サービス計画書にサービスが位置づけられていなければなりません。
介護扶助の申請方法
被保護者の介護扶助の申請に基づいて、福祉事務所で介護扶助の決定を行います。
介護扶助の決定には居宅サービス計画書の写しが必要になります。
介護扶助における居宅サービス事業者の扱い
居宅サービス事業者や居宅介護支援事業者などは生活保護による指定を受けていなければ、介護扶助を受けることができる事業所となりません。
つまり生活保護法の指定が無ければ事業者は被保護者へのサービスを行うことができません。
もっとも、介護保険法における事業所や施設は、その指定をもって生活保護法による指定を受けたものとみなされるため指定されるために特別な手続きはありません。
介護保険法の被保険者でない者への要介護認定
介護保険法の被保険者でない者が介護扶助を必要とした場合、介護扶助の要否判定を行います。その際、要介護(要支援)認定を受けることになりますが、介護保険法の被保険者でない者に対しての認定は、生活保護制度で独自に行います。
ただ、審査の判定は介護保険認定審査会に委託して行われます。
医療扶助
通院や手術など、医療的な処置が必要な場合に給付されます。
医療扶助による医療の給付は、医療保護施設又は生活保護の指定医療機関に委託して行うことができます。
診察や薬の処方箋などだけではなく、入退院時の交通費なども医療扶助からの給付対象です。
原則として現物給付です。
医療扶助を受ける場合には福祉事務所から医療券の発行が必要となります。
原則として現物給付なのは介護扶助と医療扶助だけです。
生活扶助
主に食費、被服費、水道料金など、一般的に生活をするうえで必要になる消耗品に関するものに給付されます。
原則として金銭給付です。
介護保険制度にも関連があり、次のようなものが給付の対象となります。
・40歳~64歳の医療保険加入者または65歳以上の介護保険料の普通徴収
・短期入所系サービスの滞在費や食費
・施設サービスの介護施設入所者基本生活費(日常生活費)
注意したいのが、施設サービスの食費は介護扶助から給付される一方で、短期入所系サービスの食費や滞在費などの自己負担分は生活扶助から給付される点です。
また施設サービス利用時に発生する介護施設入所者基本生活費は生活扶助から支給される点も紛らわしいのでチェックしておきましょう。
代理納付
介護保険料の普通徴収は生活扶助から給付されますが、実際は福祉事務所が代理納付をすることが一般的です。これは福祉事務所が生活保護費から介護保険料相当分の金額を天引きして、被保護者の代わりに市町村に納める制度です。
その他の扶助
その他の扶助について、試験勉強として念のために押さえておきたいのは住宅扶助と葬祭扶助です。
住宅扶助は主に家賃費用として給付される扶助です。
覚えておくべきポイントは2点です。
- 住宅の補修費に対しても給付される。
- 介護保険制度における住宅改修には給付されない。(介護扶助から給付)
葬祭扶助は火葬や埋葬に掛かった費用に給付される扶助です。葬儀費用にも給付されます。
過去のケアマネ試験の出題傾向と試験対策
ここまでケアマネ試験における生活保護制度の重要ポイントを解説してきました。
生活保護制度に関する出題は、この記事で解説した内容から特に多く出題されています。
それでは実際、過去7回の試験でどのようなポイントが出題されていたのか、下記の表にまとめてみました。
試験回 | 出題内容 |
---|---|
第26回試験 | ・補足性の原理 ・無差別平等の原理 ・保護の実施機関 ・保護の申請 ・生活扶助 |
第25回試験 | ・被保護者の収入 ・保護の申請 ・介護扶助 ・生活扶助 ・教育扶助 |
第24回試験 | ・国家責任の原理 ・無差別平等の原理 ・医療扶助 ・介護扶助 ・住宅扶助 |
第23回試験 | ・被保護者の要介護認定 ・無差別平等の原理 ・生活保護法の事業者指定 ・葬祭扶助 ・福祉事務所 |
第22回再試験 | ・医療扶助 ・生活扶助 ・保護の原則 ・補足性の原理 ・保護の申請 |
第22回試験 | ・保護の原則 ・介護扶助×2 ・生活扶助 ・生業扶助 |
第21回試験 | ・保護の申請 ・介護扶助 ・住宅扶助 ・生活扶助×2 |
上記の表のうち、特に出題の多かった4つのポイントを下記の表にまとめています。
出題ポイント | 選択肢の出題回数 |
---|---|
生活扶助 | 6回 |
介護扶助 | 5回 |
保護の申請 | 4回 |
無差別平等の原理 | 3回 |
上記の表から近年のケアマネ試験では、生活扶助や介護扶助に関する内容の出題が特に多い傾向が分かります。ほぼ毎年、どちらか又はどちらも選択肢として出題される傾向があるため今後も特に力を入れて覚えるべきかと思われます。
また、この2つ以外の扶助についても出題がありますが、問われる内容として多いのは「〇〇扶助は現物給付か金銭給付か」といった給付方法についてです。そのため介護扶助と医療扶助以外は金銭給付が原則という点も必ず覚えておきましょう。
保護の申請については、過去の試験を見ても「誰が保護の申請を行うことができるか」と「要保護者が急迫した状況にあるとき」の2パターンの出題が目立ちます。
無差別平等の原理は、その名称の通りかなりシンプルな原理です。日本国籍を持たない外国人も条件付きで保護の対象であるという点さえ押さえておけば、この原理を知っているだけで多くの場合、解答が容易かと思われます。
おわりに
ここまでケアマネ試験のポイントとしての生活保護制度についての解説をしました。
過去に出題された具体的な内容については、過去問をご覧ください。
生活保護制度に関する出題は、一見難しいように見えて出題パターンがある程度決まっています。
試験難易度の大幅な変化や改正等がなければ今後もこの傾向が続くと予想されます。
そのため、重要なポイントを把握し過去問を反復して行うのが最も効率のいい試験勉強です。
皆さまがケアマネジャー試験に合格できるよう、祈願しております。