長期保険と短期保険のそれぞれの特徴と違いについて

2024年1月7日2024年6月4日

ケアマネジャー試験(介護支援専門員実務研修受講試験)に向けて勉強していると、「長期保険」、「短期保険」という言葉を目にします。
介護保険は長期保険？短期保険？と判断に悩む人もいるかもしれません。
今回は、社会保険の基礎知識の一つである「長期保険と短期保険の違い」について解説します。
ちなみに、先に書いておくと介護保険は「短期保険」です。

長期保険と短期保険とは？

まず、長期保険と短期保険とは何でしょうか？と、いきなり聞かれてもなかなか答えられる人はいないでしょう。
これらは、社会保険の分類の仕方の一つです。
社会保険とは、国や地方自治体が主催する保険制度のことで、国民の生活や健康を守るためにあります。

社会保険には、医療保険、年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険などがあります。
また、保険財政の形態によって、長期保険と短期保険に分けられます。
保険財政の形態とは、保険料の徴収や保険給付の支払いの仕方のことです。

長期保険と短期保険の違いをケアマネジャー試験に出題される内容に沿った形で簡単に説明すると、以下のようになります。

長期保険：保険料を長期間にわたって積み立てて、将来の保険給付に備える社会保険。年金保険が該当する。
短期保険：保険料をその年度に徴収して、その年度の保険給付に使う社会保険。医療保険、介護保険、雇用保険、労災保険が該当する。

長期保険と短期保険のメリットとデメリット

それでは、長期保険と短期保険には、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか？
以下にまとめてみました。
※ケアマネジャー試験には、ほとんどこの項目については出題がないと想定されますので、興味がない場合は飛ばしてください。

長期保険のメリットとデメリット

メリット：将来のリスクに備えられる。保険料の負担が平準化される。保険給付の安定性が高い。
デメリット：保険料の負担が長期間にわたる。保険料の返還がない。保険料の見直しが難しい。

短期保険のメリットとデメリット

メリット：保険料の負担が短期間に限られる。保険料の返還がある場合がある。保険料の見直しが容易。
デメリット：将来のリスクに対応できない場合がある。保険料の負担が変動する。保険給付の安定性が低い。

この長期保険、短期保険のメリットとデメリットについて見てみても、介護保険がどちらに該当するか分かりづらいですよね。
記事冒頭で『介護保険は短期保険』と書きましたが、

「保険料の負担が短期間…？」

などと感じた人もいるのではないでしょうか。
それでは、なぜ介護保険が長期保険でないのかの解説も行っていきましょう。

介護保険は長期保険ではないの？

上では社会保険の分類の仕方の一つである「長期保険と短期保険の違い」について解説しましたが、その中で特に気になる点について、もう少し詳しく見ていきましょう。

介護保険は、高齢者の介護にかかる費用の一部を給付する制度ですが、その財源は3年ごとに見直される保険料と税金で賄われています。
つまり、保険料を積み立てて将来の給付に備えるという長期保険の特徴とは異なります。

では、なぜ介護保険は長期保険ではないのでしょうか？
その理由は、以下のようなものが考えられます。

介護保険の給付は、要介護認定を受けた時点で受けられるため、加入期間に関係なく給付される。
長期保険の場合は、加入期間が給付に影響する。
介護保険の給付は、介護サービスの提供という形で行われるため、現物給付と呼ばれる。
長期保険の場合は、年金の支払いという形で行われるため、現金給付と呼ばれる。
介護保険の財源は、少子高齢化や介護需要の増加などによって変動するため、3年ごとに見直す必要がある。
長期保険の財源は、長期的な収支のバランスを考えて設定されるため、見直しの頻度は低い。

以上のように、介護保険は長期保険とは異なる特徴を持っています。
しかし、これは介護保険が長期的な視点を欠いているということではありません。
介護保険は、介護の予防や自立支援などを通じて、高齢者の健康寿命の延伸や介護負担の軽減を目指しています。また、財源には、税金も含まれています。
税金は、国民の所得や消費に応じて徴収されるため、保険料とは異なる財源の安定性を持っています。

介護保険は、長期保険ではありませんが、長期的な介護の課題に対応するための仕組みとして、社会全体で支え合う制度です。
その仕組みや特徴を理解することで、介護支援専門員としての役割や責任もより明確になります。