住宅改修って割と頻繁に利用者から頼まれる機会があるサービスの1つですよね。
「その住宅改修なら介護保険から一部お金が市町村からでますよ!」
とケアマネはつい言いがちですが、ちょっと待ちましょう。
ケアマネが住宅改修費が支給対象だと考えていても、実は市町村から申請が却下されるなんてケースもあるのです。
この記事ではケアマネが判断に困るような住宅改修のケース、実は給付対象外となるケースをご紹介していきます。

勤務地のルールが絶対だから、迷ったら基本的に市区町村の担当窓口に問い合わせてねっ!
住宅改修の申請中の入院



住宅改修の話を進めていたのに利用者さんが入院しちゃった!退院前に住宅改修が完了しているようにしておかなきゃっ!
これ基本的にNGです。
介護保険における住宅改修は、居宅で生活をしている要介護(要支援)者向けのサービスです。
利用者が急に入院・入所した場合、住宅改修の話は一旦ストップしなければなりません。
ただし数日間の入院、明確に退院の目途が立っている場合などには市町村によっては認めている場合もあるようです。
退院前であっても、事前申請を行い、工事を進めることができます。
佐倉市【よくある質問】介護保険の住宅改修について
ただし、退院後でないと事後申請はできません。また、退院しなかった場合は全額自己負担となりますので、ご注意ください。
介護保険の住宅改修は「居宅」サービスであるため、たとえ退院を前提にしていても入院中は住宅改修費を支給することはできません。ただし、退院に先立って住環境を整えるために、入院中に住宅改修を行うことは可能です。
川崎市 事例1
また、「新規利用者で現在入院中、退院日は決定済み」のようなケースの場合、市町村が許可を出せば住宅改修が退院前に認められる場合があります。おそらくほとんどの市町村はOKを出してくれるケースです。
入院・入所に関する住宅改修費の給付の詳細は勤務地の担当部署にお問い合わせください。
認定が出ていない利用者の住宅改修



新規の利用者さんに住宅改修をお願いされたんだけど、新規申請中でまだ要介護度の判定出てないんだよねっ
このようなケースのほかにも、区分変更申請中に住宅改修の依頼があることもあります。
実は認定が出ていない利用者に対しての住宅改修は、市町村によって判断が大きく異なっています。
新規認定申請中や区分変更中でも事前申請はでき、審査後、事前申請確認書が発行された場合は、工事に着手することは可能です。
江東区 住宅改修費の支給
区分変更申請中や新規・更新申請中で介護度が確定していない期間は原則申請をおこなうことはできません。
柏市 【介護保険】住宅改修費支給
このほかにも、受領委任払いでの住宅改修が不可となる場合や事後申請を認めている場合などもあります。このように市町村ごとの判断に違いがあるため、必ず勤務地の担当部署に確認する必要があるケースとなります。
夫婦で同一場所の住宅改修
例えば住宅改修の意向が、次のような同一の場所で複数工事を行うケース。
- 浴室の段差解消
- 浴槽の高さの変更
- 浴室壁への手すりの設置
- 浴室扉を開き戸から引き戸への変更
夫婦で要介護認定を受けている場合、上記のような1ヶ所の改修の意向がもりもりで改修費が住宅改修費支給限度基準額をオーバーする可能性があるときは注意が必要です。
1ヶ所の住宅改修で2人分の住宅改修費の支給は、原則として認められていません。
ただ「1ヶ所」の範囲が市町村の判断によって分かれるため、この点は担当部署へ確認するのが無難です。
下記のように「トイレの手すり設置が必要な夫」、「便座取替えが必要な妻」のような必要な箇所が重複しない場合には、許可されることがあります。
ひとつの工事に重複して使うことはできません。例えばご主人の分は手すりに、奥様の分は便器取替えにといった具合にしてください。
住宅改修のよくある質問
同時に複数の要介護者にかかる住宅改修が行われた場合は、各要介護者に有意な範囲を特定し、その範囲が重複しないよう申請する必要があります。
松山市 介護保険制度における住宅改修の手引き
住宅改修を家族や本人が行う場合
意外と知られていませんが、家族や本人が住宅改修を行う場合、住宅改修費の支給対象です。
住宅改修費の支給の手順を踏んで行う必要があります。
この場合、材料費のみが給付されます。工賃、人件費などは給付対象に含まれません。
これは家族、本人が工務店を営んでいた場合でも同様です。
1階と2階のトイレの住宅改修
利用者宅が一軒家で、ADLが比較的自立している利用者に多いケースです。
一見簡単に認められると思う人もいるかもしれませんが、条件付きで許可という市町村が大半です。
どのような条件かというと、下記の通りです。
主に使用するトイレが対象となる。生活動線が各階にある場合は給付対象となるが、主な日常生活は1階で完結しており、2階には季節のものを取りに行く時だけ行く場合等は対象とならない。
東京都大田区介護保険住宅改修についてのQ&A
住宅改修は「日常生活上、必要なもの」を対象としています。1階に居住するスペースがある場合は、2階のトイレの手すりの設置は保険給付の対象外です。2階のトイレを使用する理由、頻度によれば保険給付の対象となる場合があります。「住宅改修が必要な理由書」に詳しく記載してください。
介護保険住宅改修 Q&A 泉佐野市版
どちらか1か所だけが支給対象となります。生活導線上や身体状況を勘案し、両方に必要であると判断される場合は、理由書にその旨の記載していただいた上で個別に判断することとなります。
富士見市 住宅改修におけるよくある問い合わせ
あくまで、利用者の日常生活上必要であれば許可を出すといった姿勢です。例えば「寝室が2階にある」といった理由で1階と2階のトイレへの住宅改修を申請する場合でも、ます1階への寝床の移動を検討することが前提となります。
当然、この場合には理由書にも寝床を1階に移すことができない理由、2階トイレを使用しなければならない理由を記載していなければ、判断基準の厳しい市町村であれば申請却下となるため注意が必要です。
なお2階のトイレだけに住宅改修を行う場合には、2階での生活実態があれば問題なく許可が出ると思われます。
階段への住宅改修
階段への住宅改修は、ケアマネが誤って利用者に住宅改修費の支給対象と伝えやすい工事の1つです。
特に次のような住宅改修の意向には、注意して回答しなければなりません。
2階へ移動するための手すり
階段への住宅改修の意向のうち、最も多いのが手すりの設置と言われています。
ただしこの手すりの設置、生活上必要でなければ住宅改修費の支給は認められていません。
- 寝室が2階にあり、寝床を1階に移すことが困難な場合
- 玄関が2階にあり、主な生活スペースが1階にある場合
- 家事等で2階に移動する必要があり、1階で完結することができない場合
- 寝室が2階にあるが、寝床を1階に移すことが可能な場合
- 日常生活上で2階に移動することがない場合
- 2階に移動しなくても生活が完結する場合(服の入れ替えで2階に移動したいなど)
- リハビリのために設置したい場合
手すりの設置は、その設置を行わなければ通常の日常生活に支障が出るかという視点で住宅改修費の支給が認められます。
「たまに2階に移動したい」「リハビリのために必要」といった理由だと、ほとんどの場合認められません。また、2階に行く必要があるものの、住宅改修以外で解決できる場合も認められない場合があります。
階段への手すりの設置の意向が利用者からあった場合には、その理由を必ず確認しましょう。
まずは被保険者が階段を使わずに生活を完結できないか検討してください。検討した結果、それでも手すりが必要な場合は支給対象となります。
富士見市 住宅改修におけるよくあるお問い合わせ
階段の踏み面の変更



利用者さんに、階段の踏み面が狭くて危ないから広げたいって相談があったの!
踏み面とは?となった方もいるかもしれませんので、まずは下の確認画像をご覧ください。


この面が狭くて転びそうになるといった相談がたまにあります。
踏み面を広げる工事は、住宅改修費の支給対象外です。これは全国ほぼすべての市町村で認められていないはずです。
その理由は、段差の解消に当てはまらないためです。
踏み面の幅を広くする工事は、段差の解消に当てはまらないため支給対象外となる。
綾部市 住宅改修Q&A集
踏み面を増やすことで緩やかにはなりますが、元々の高さは変わっていない(段差解消ではない)ため、支給対象外となります。
桶川市 住宅改修Q&A集
うっかり「住宅改修費が支給されます」と答えないよう注意しましょう。
おわりに
ここまでケアマネの判断に迷う住宅改修、実は給付対象外となる住宅改修のケースについてご紹介しました。
介護保険による住宅改修は、この記事で紹介したケース以外でも市町村担当部署でも判断に困るようなケースに遭遇することがあります。
利用者から意向を伝えられ判断に迷った場合には、即答せずまずは担当部署に確認しましょう。




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