「ケアマネジャーの求人票を眺めていたら、自分の希望に合致する事業所が他県にあった。」
「自分の住む県では魅力的なケアマネジャーの求人が見つからない。」
このような理由で他県での就労を考える方も多いのではないでしょうか。
地域によって介護サービスの需給バランスや働き方が異なる中、自身のスキルを活かしつつ新たな地で活躍することは、キャリアの幅を広げる絶好の機会となります。
本記事では、他県での就労に興味を持つケアマネジャーの皆様に向けて、必要な手続きとその所要期間について詳しく解説していきます。
- ケアマネの資格の登録移転の手順
- 登録移転に掛かる大まかな日数
- 他県で働くにあたっての注意点
他県で働くために必要な手続き
実は、ケアマネジャーとして他の都道府県で働き始めるために必要な手続きはありません。
ケアマネジャーの資格は都道府県ごとの登録となるため、他の都道府県で働くためにはその都道府県に登録移転をしなければならないと誤解している人も多いです。
実際、他県で働き始めるためには手続きが必要であると誤った情報がweb上にも散見されます。
しかし、ケアマネジャーの資格は全国共通の資格でもあるため、登録さえされていれば登録移転をしなくても他の都道府県ですぐに働き始めることができます。
このような回答が東京都福祉局と神奈川県福祉子どもみらい局から得られました。東京都福祉局の登録移転に関するQ&Aにも記載されています。
ただし住所変更を伴う場合(引っ越しなど)は、ケアマネジャーとして登録している都道府県に登録事項変更届をしなければなりません。
そのため「他の都道府県で働くことが決まったからすぐに登録移転しなきゃ…!」と焦って手続きする必要はありません。
なぜ登録移転する必要があるのか?
登録移転をしなくても他の都道府県で働くことができるなら、なんで登録移転なんて手続きがあるのっ?
ここまで読んで、登録移転の手続き自体、何のためにあるのか疑問に感じた人も多いのではないでしょうか。
登録移転を行うことにより、移転先の都道府県の更新研修を含む各種研修を受けることができるようになります。
例えば北海道から東京に引っ越してきたとき、登録移転を行えば東京都でケアマネジャーの研修を受けられます。
しかし登録移転を行わない場合、更新時の研修は登録地の都道府県で行うことが原則であるため東京に住んでいるのに北海道で受ける必要があります。
登録移転の手続きをしていなくても受講地変更手続きを行えば、勤務地の都道府県の更新研修を受けることができます。ただし更新研修の都度、受講地変更を行わなければならなかったり、その他の都道府県が行う研修を受けることができない可能性があるといったデメリットもあります。
そのため引っ越し等を伴う転職の場合には、登録移転をするメリットが大きいです。
反対に、現在の住所で他の都道府県に勤務する場合には登録移転をする必要性はそこまで大きくありません。
登録移転の手続き
登録移転の手続きは、元の登録の都道府県と働く先の都道府県の2ヶ所に対して行う必要があります。
大まかな手続きの流れは次の通りです。
まず働く先の都道府県のホームページの確認、または問合せなどから、登録移転の受入れの可否や手続き方法を確認しましょう。
次に働こうと考えている職場のある都道府県に届出を提出します。この手続きは、「介護支援専門員登録移転申請書」という書類の提出によって行われます。
この書類は「ケアマネ 登録移転 〇〇県」と検索することで、多くの都道府県の専用webページからダウンロードすることができます。
また、このほかにも提出しなければならない書類等があります。
働く先の都道府県へ届出を行うだけでなく、今の時点で登録している都道府県に対しても提出する書類等が定められています。多くの場合、働く先の都道府県の書類様式を用いて提出するため、予め確認を行いましょう。
ここで1点、注意点があります。
登録移転を行うためには、既にケアマネジャーとして働く先の都道府県にある事業所に勤務しているか、就職が決まっている状態でなければなりません。
ケアマネとして東京都で働きたい!
こう考えている段階ではまだ登録移転を行うことはできないため、気を付けましょう。
登録移転に必要な書類
都道府県ごとに若干異なる場合もありますが、働く先の都道府県に提出しなければならない書類は次の通りです。
- 働く先の都道府県の介護支援専門員証交付申請証
- 登録移転申請連絡票
- 6か月以内に撮影した自身のカラー写真
- 更新に必要な研修の修了証書の写し(有効期間の更新と同時に移転する場合)
また、今登録している都道府県に提出しなければならない書類は次の通りです。
- 登録している都道府県の介護支援専門員証
- 働く先の都道府県の介護支援専門員登録移転申請書などの必要書類一式
- 住民票
- 戸籍謄本(氏名が変更となる場合)
必要書類は都道府県によって異なるので、必ず働く先の都道府県ホームページ等で確認してねっ
このほか、ケアマネジャーの登録移転には手数料が発生します。
手数料は働く先の都道府県に支払います。
金額や支払い方法は都道府県ごとに異なるため、事前に確認しましょう。
手続き完了までどのくらい時間が掛かる?
登録移転の手続き期間は、今登録と転入先の都道府県の処理速度によって多少の差があります。2つの都道府県で手続きを進めなければならないため、ある程度に日数が掛かることは念頭に置いておきましょう。
東京都に確認をしたところ、一般的な目安は以下の通りです。
- 今登録している都道府県での手続き:約1ヶ月~1ヶ月半
- 働く都道府県での手続き:1ヶ月~1ヶ月半
登録移転時には2つの都道府県で手続きを行いますが、同じタイミングで行うことができるため、おおよそ1ヶ月半程度を見込んでおくとよいでしょう。
ただし、書類の不備や繁忙期(年度末や年度始め)は処理に時間がかかる場合があります。
登録移転の手続き中はケアマネジャーとして働けない?
登録移転中でもケアマネジャーとして働くことができます。
ただし登録移転に際して介護支援専門員証を提出しているため、手続きが完了し新しい介護支援専門員証が届くまでは手元にありません。
利用者やその家族等に見せる場面も想定されるため、必ず原本のコピーを取り携帯しておきましょう。
他の都道府県で働くにあたっての注意点
地域ごとの制度やローカルルールの違い
介護保険制度は全国共通の基準に従って運用されているものの、都道府県ごと、さらには市町村ごとにローカルルールがあります。
介護サービスの充実度も異なることがほとんどです。
そのため次のようなことに注意する必要があります。
- 地域包括支援センターの役割や連携方法
- 他法制度(障害者総合支援法など)のサービスとの連携方法
- 介護サービス事業所の種類や数
- 社会資源の種類や数
- 独自の介護予防事業や地域支援事業の存在
大抵の場合、もともと働いていた都道府県、市町村とこれらが全く同じということはまずありません。
そのためスムーズに働き始めるには、働く前に確認しておくことが望ましいです。
ネットワーク構築の重要性
新しい地域では、医療機関、介護サービス事業所、行政機関などとの関係性をゼロから構築する必要があります。
既にケアマネジャー同士、介護従事者同士のネットワークの重要性を感じている人もいると思いますが、以下の方法で積極的にネットワークを広げることをおすすめします。
- ケアマネジャーの研修会や勉強会への参加
- 地域包括支援センターとの密な連携
- 同業者のコミュニティへの参加
まとめ
ここまで他の都道府県でケアマネジャーとして働くときの手続きや注意点について解説しました。
他県でケアマネジャーとして働くことは、視野を広げる素晴らしい機会となります。
現在働いている都道府県にはない魅力的な職場で働くことができるかもしれません。
以下、この記事の重要なポイントをまとめています。
- 他都道府県で働くためには登録移転は必須ではない。
- 引っ越しを伴う場合、登録移転はなるべくしたほうがよい。
- 登録移転を考えている場合には、働く先の都道府県HPで確認を。
- スムーズに働き始めるためには事前に社会資源や介護サービス、地域包括支援センターなどの情報を収集しておく。
特に経験が浅いケアマネジャーは、ネットワーク構築やローカルルールの把握に苦労する人も多くみられるます。
そのため、より周到に準備しておいたほうが転職してから悩むことが少なくなるかもしれません。
みなさまがより良い職場でケアマネジャーとして働くことを、祈願しております。