この記事の学習優先度は”低い”です。
介護保険制度における低所得者対策の1つとして特定入所者介護サービス費があります。
ケアマネジャー試験への出題頻度が高くないうえに、似たような利用者負担の軽減策や名称があるため覚えるのに苦戦するポイントの1つです。
ただ、制度自体は複雑なものではないため、概要を捉えてしまえば比較的覚えやすいかと思われます。
この記事では、他の利用者負担の軽減策の内容を交えて、特定入所者介護サービス費の分かりやすい覚え方などについて解説していきます。
特定入所者介護サービス費の概要
所得の低い人に対して施設サービス(地域密着型介護老人福祉施設を含む)と短期入所系サービスの居住費(滞在費)と食費には負担上限額が設けられています。
この負担上限額を超えた分が、特定入所者介護サービス費として介護保険から施設や事業所に対して支給されます。
負担上限段階は4段階に分けられていますが、第4段階は特定入所者介護サービス費の対象外です。
利用者負担段階 | 対象者 |
---|---|
第1段階 | 生活保護受給者 非課税世帯の老齢福祉年金受給者 |
第2段階 | 非課税世帯で年金収入等が80万円以下 |
第3段階① | 非課税世帯で年金収入等が80万円超~120万円以下 |
第3段階② | 非課税世帯で年金収入等が120万円を超える |
第4段階 (特定入所者介護サービス費の対象外) | 課税者のいる世帯、課税者本人 |
この表自体はケアマネ試験にそこまで重要ではないから、覚えなくても多分大丈夫っ
ちなみにこの「所得の低い人」とは、生活保護制度の被保護者も含みます。
特定入所者介護サービス費が支給される要件は、次の通りです。
・本人とその世帯全員が市町村民税非課税者であること。
・本人等の預貯金の合計額が一定額以下であること。
・負担限度額認定を受けていること
また、特定入所者介護サービス費の対象者には、申請により介護保険負担限度額認定証が交付されます。
ケアマネジャー試験対策としては、上記の内容だけを覚えておけば、特定入所者介護サービス費の問題および選択肢が出題されても攻略可能かと思われます。
特定入所者介護サービス費と高額介護サービス費の違い
特定入所者介護サービス費自体は、ケアマネジャー試験上は覚えることも少ないです。
出題頻度も決して高いほうではありません。
しかし、他の利用者負担軽減策、特に高額介護サービス費と混同しやすいため、覚える難易度が高くなっています。
特定入所者介護サービス費と高額介護サービス費の違いは、次の通りです。
※全く別の制度であるため、本来は比較するものではありません。
支給の対象
特定入所者介護サービス費の支給の対象は、施設サービス、短期入所系サービスの居住費(滞在費)と食費です。
対して、高額介護サービス費では、介護保険サービス利用時の利用者負担分が支給対象です。
施設サービス、短期入所系サービスの居住費(滞在費)と食費は、保険給付対象外で利用者の全額自己負担であるため、高額介護サービス費の対象外です。
項目 | 特定入所者介護サービス費 | 高額介護サービス費 |
---|---|---|
負担対象 | 施設サービス、短期入所の居住費(滞在費)と食費 | 介護保険サービス利用時の利用者自己負担分(〇割負担分) |
そのため、支給対象となる利用者の属性にも違いがあります。
特定入所者介護サービス費の支給対象となる者は、施設サービスの利用者及び短期入所系サービスの利用者です。
対して、高額介護サービス費の対象者は、利用者自己負担分のある介護保険のサービスの利用者です。
ただし特定福祉用具販売や住宅改修は含まれません。
また、利用者自己負担分のない居宅介護支援と介護予防支援も、高額介護サービス費の対象ではありません。
項目 | 特定入所者介護サービス費 | 高額介護サービス費 |
---|---|---|
対象者 | ・施設サービスの利用者 ・短期入所系サービスの利用者 | 利用者自己負担分のある介護保険のサービスの利用者 |
対象外のサービス | 施設サービス、短期入所系サービス以外 | ・特定福祉用具販売 ・住宅改修 ・居宅介護支援 ・介護予防支援 |
高額介護サービス費については、こちらの記事にケアマネジャー試験試験向けの内容を詳細にまとめていますので、よろしければご覧ください。
ケアマネジャー試験の攻略という点だけであれば、特定入所者介護サービス費と高額介護サービス費の違いは上記だけ覚えておけば、ほぼ問題ないかと思われます。
特定入所者介護サービス費の間違えやすい点
「特定」と付くことで、特定施設入居者生活介護と関係のあるものと考えてしまう人もいるかもしれませんが、一切関係がありません。
特定施設入居者生活介護は施設サービスでもないため、特定入所者介護サービス費の対象外です。
関連付けないよう注意しましょう。
特定入所者介護サービス費に関する過去の出題
特定入所者介護サービス費に関する出題は、令和元年~令和5年の試験で1回出題されています。
過去10年分の試験をみても、設問として出題された回数は1回だけで、選択肢としては計3回出題されています。
出題頻度は高いほうではありません。
過去の試験では次のような問題が出題されています。
特定入所者介護サービス費の支給について正しいものはどれか。3つ選べ。
1 対象となる費用は、食費と居住費(滞在費)である。
2 負担限度額は、所得の状況その他の事情を勘案して設定される。
3 対象となるサービスには、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護は含まれない。
4 対象となるサービスには、特定施設入居者生活介護は含まれない。
5 対象者には、生活保護受給者は含まれない。
令和2年度第23回介護支援専門員実務研修受講試験 問8解答をみる
正解 1,2,4
介護保険の利用者負担に係る低所得者対策について正しいものはどれか。2つ選べ。
1 生活保護受給者は、高額介護サービス費の支給の対象とはならない。
2 特定入所者介護サービス費の対象者には、申請により「介護保険負担限度額認定証」が交付される。
3 特定入所者介護サービス費支給後の利用者負担額については、社会福祉法人による利用者負担額軽減制度は適用されない。
4 社会福祉法人による利用者負担額軽減制度の対象には、食費が含まれない。
5 社会福祉法人による利用者負担額軽減制度の対象には、居住費が含まれる。
平成26年度第17回介護支援専門員実務研修受講試験 問9解答をみる
正解 2,5
特定入所者介護サービス費そのものを問う出題では、今後出題があったとしても、基本的に過去問で既に出題されているような内容であったり、この記事で解説している概要の部分のみの出題になると予想しています。
これは過去のケアマネジャー試験の出題傾向として、利用者負担軽減制度に関する問題や選択肢では、具体的な上限額や金額に触れるものが見られないためです。
それに、深堀りするほど複雑な内容がある制度でもありません。
そのため概要を把握しておけば、出題があっても多くの場合回答できるかと思われます。
おわりに
特定入所者介護サービス費は、ケアマネジャー試験での出題頻度は少ないものの、高額介護サービス費などの負担軽減制度と混同しやすいポイントです。
特定入所者介護サービス費と高額介護サービス費の違いを区別することができていると、より出題頻度の高い高額介護サービス費に関する出題が容易に回答できる可能性が高まります。
この記事にまとめている制度の概要をしっかり覚えて、試験に臨んでみてください。
皆さまがケアマネジャー試験を合格できるよう、祈願しております。
概要を覚える余裕が無かったら「施設、ショートステイ、食費、居住費」とだけ覚えておけば、意外となんとかなるかもっ?