この記事の学習優先度は”高い”です。
ケアマネジャー試験で近年見られるようになったワードの1つに、重層的支援体制整備事業があります。
令和4年(第25回)試験に設問として出題され、令和5年(第26回)試験では選択肢として出題されていました。
出版されているケアマネジャー試験対策テキストでも完全に対応しきれていないものが多く、その全容や試験に出題が予想されるポイントについての把握に苦労している人は多いのではないでしょうか。
この記事ではケアマネジャー試験対策としての重層的支援体制整備事業について分かりやすく解説していきます。
より詳細な内容については、厚生労働省HPまたは各市町村のHPやこども家庭庁の通知をご覧ください。
個人的には子ども家庭庁の通知のほうが整理されていて分かりやすかったよっ
重層的支援体制整備事業の試験での重要度
重層的支援体制整備事業のケアマネジャー試験での重要度は比較的高いと言えます。
この理由として直近の試験で2年連続で重層的支援体制整備事業に関する出題があった点、さらに令和6年度の制度改正の目的の1つに、地域ケアシステムの深化があるため、さらに出題されやすい環境となったということが挙げられます。
今後、出題される内容が難化する可能性も十分に考えられるため、学習に余裕があれば時間を割いて理解を深めていくことがおすすめです。
重層的支援体制整備事業はいつから始まった?
重層的支援体制整備事業の開始は令和3(2021)年4月からです。
令和6年度は介護保険制度改正があるため、令和6年度のケアマネジャー試験では制度改正に関する問題が出題される可能性があります。
制度改正に関する問題(例:令和6年介護保険制度改正の内容として適切なものはどれか。)は、前回の改正内容が誤りの選択肢として出題されやすいです。
ただ、重層的支援体制整備事業は介護保険法に基づく事業ではなく、社会福祉法に基づく事業です。
そのため介護保険法改正の内容として~といった問われ方が多いケアマネジャー試験では、開始年までは問われないかもしれません。
重層的支援体制整備事業に関する過去の出題
冒頭でも述べたように、重層的支援体制整備事業に関する出題は過去に2回ありました。
どのようなことが問われたのか確認してみましょう。
ケアマネジャー試験 令和4年度(第25回)介護支援分野 問2
社会福祉法における「重層的支援体制整備事業」について正しいものはどれか。3つ選べ。
1 都道府県が行う。
2 地域生活課題を抱える地域住民の社会参加のための支援が含まれる。
3 地域づくりに向けた支援が含まれる。
4 地域生活課題を抱える地域住民の家族に対する包括的な相談支援が含まれる。
5 介護保険の居宅介護支援が含まれる。
ケアマネジャー試験 令和4年度(第25回)
ケアマネジャー試験 令和5年度(第26回)介護支援分野 問2
地域福祉や地域共生社会について正しいものはどれか。3つ選べ。
1 市町村は、包括的な支援体制を整備するため重層的支援体制整備事業を実施しなければならない。
2 市町村は、市町村地域福祉計画を策定するよう努めるものとする。
3 地域共生社会とは、子供・高齢者・障害者などすべての人々が地域、暮らし、生きがいをともに創り、高め合うことができる社会のことである。
4 介護保険法に基づく地域支援事業等を提供する事業者が解決が困難な地域生活課題を把握したときは、その事業者が自ら課題を解決しなければならない。
5 高齢者と障害児・者が同一の事業所でサービスを受けやすくするための共生型サービスは、介護保険制度と障害福祉制度の両方に位置付けられている。
ケアマネジャー試験 令和5年度(第26回)
これを踏まえてケアマネジャー試験で重要となる重層的支援体制のポイントを解説していきましょう。
重層的支援体制整備事業の重要ポイント
概要
重層的支援体制整備事業は、地域共生社会を実現するために行われる事業の1つです。
市町村全体で「分野を問わない相談支援」、「参加支援」および「地域づくりに向けた支援」を一体的に実施することを必須とし、包括的な支援体制を整備するための事業です。
重層的支援体制整備事業の実施は努力義務であり、市町村の任意事業です。
そのため必ず行わなければならないということではありません。
また、市町村は重層的支援体制整備事業を各事業の一体的な実施が確保されるよう必要な措置を講じた上で、事務の全部又は一部を社会福祉法人やNPO法人などに委託することができます。
事業内容
重層的支援体制整備事業では次のような事業を行います。
① 包括的相談支援事業
② 地域づくり事業
③ 多機関協働事業
それぞれ分かりやすく解説していきましょう。
包括的相談支援事業
高齢者、子ども、障害者、生活困窮者など4つの福祉の相談窓口から受けた相談を、属性ごとの括りで問題を分類せず、利用可能な福祉サービス等の情報提供等を行う事業です。
過去問に出題されているような、地域生活課題を抱える地域住民の家族に対する包括的な相談支援も含まれます。
また、相談者が複雑・複合的な問題を抱えていた場合、多機関協働事業に繋げていく役割を担います。
包括的相談支援事業で実施する事業は次のようなものがあります。
分野 | 事業名 |
---|---|
高齢者分野 | 包括的支援事業の地域包括支援センターの運営 |
子ども分野 | 利用者支援事業 |
障害者分野 | 障害者相談支援事業の基本事業など |
生活困窮者分野 | 自立相談支援事業(町村は必須ではない) 福祉事務所がない町村による相談支援事業 |
過去の出題では「居宅介護支援は重層的支援体制整備事業に含まれるか」が選択肢として出題されましたが、居宅介護支援は含まれず、地域包括支援センターの運営が含まれるということは必ず覚えておきましょう。
高齢者分野以外の事業についてはケアマネジャー試験で出題される可能性としては低いと予想されるため、無理に覚える必要は無いと思われます。
地域づくり事業
世代や属性に関係なく地域住民が交流できる多様な場や居場所を整備することや交流・参加の機会を生み出すための事業です。
個別の活動や人をコーディネートしたり、多様な地域活動が生まれやすい環境整備を行うことを目的としています。
地域づくり事業で実施する事業は次のようなものがあります。
分野 | 事業名 |
---|---|
高齢者分野 | 一般介護予防事業の地域介護予防活動支援事業 包括的支援事業の生活支援体制整備事業 |
子ども分野 | 地域子育て支援拠点事業 |
障害者分野 | 地域活動支援センターの基本事業 |
生活困窮者分野 | 共助の基盤づくり事業 |
地域づくり事業には、一般介護予防事業の地域介護予防活動支援事業と包括的支援事業の生活支援体制整備事業が含まれます。
これはまだ試験に出題されていない内容ですが、今後出題される可能性がありますので覚えておくことをおすすめします。
包括的相談支援事業と同様、高齢者分野以外の事業についてはケアマネジャー試験で出題される可能性としては低いと予想されるため、無理に覚える必要は無いと思われます。
多機関協同事業
重層的支援体制整備事業における支援の進捗状況の把握、助言、事例の調整、関係者の連携の円滑化など、市町村における包括的な支援体制を構築できるよう支援することを目的とした事業です。
多機関協働事業は主に支援者を支援する役割を担う事業ですが、複雑・複合的な支援ニーズを持つ人に対して直接支援を行うこともあります。
基本的には次のような流れで支援を行います。
ここでのプランとは、支援関係機関の役割分担や支援の目標・方向性を定めるものをいいます。
ケアマネジャー的な事業と考えると分かりすいかもしれません。
また多機関協同事業は、重層的支援会議を開催します。
会議の参加者には、市町村と多機関協働事業者、包括的相談支援事業、アウトリーチ等を通じた継続的支援事業、参加支援事業の事業者達が含まれます。
① プランの適切性の協議
② プラン終結時等の評価
③ 社会資源の充足状況の把握と開発にむけた検討
なお重層的支援会議は次の4つのタイミングで必ず開催しなければならないとされています。
① プラン策定時
② 再プラン策定時
③ 支援終結の判断時
④ 支援中断の決定時
また多機関協同事業には、関連する事業にアウトリーチ等を通じた継続的支援事業と参加支援事業があります。
アウトリーチ等を通じた継続的支援事業
複合化・複雑化した課題を抱えているが支援が届いていない人を把握し、また、潜在的なニーズを抱える人に関する情報を得て本人に対して働きかけを行って、関係性の構築を目指す事業です。
アウトリーチ等を通じた継続的支援事業の従事者については、保健医療福祉等の専門職など、適切に業務を行うことができる人材を配置することが望ましいとされています。
この事業はおそらくケアマネジャー試験では掘り下げられて問われる可能性が低いと予想されるため、試験対策としてはこのような事業があるとだけ覚えておくだけでいいかもしれません。
具体的な内容に関して知っておきたい方は、冒頭でご紹介した厚生労働省HPや子ども家庭庁の通知からご覧ください。
参加支援事業
支援が必要な人およびその世帯のニーズや抱える課題などの把握や地域の社会資源とのマッチング、本人やその世帯の支援ニーズや状態に合った支援メニューの作成を目的とする事業です。
支援対象は、既存の各制度における社会参加支援に向けた支援では対応できない、個別性の高いニーズを有している人などが想定されています。
具体的な例としては、
・世帯全体としては経済的困窮の状態にないが、親が後期高齢者かつ子が引きこもりの状態である世帯
・何らかの事情により親や家族に頼ることができないが、児童福祉法の対象外の10代後半
等が挙げられます。
この事業についてもケアマネジャー試験で出題される可能性は低いと予想されます。
このような事業もあるとだけ覚えておくだけでいいかもしれません。
まとめ
ここまで重層的支援体制整備事業について、ケアマネジャー試験で出題される可能性のあるポイントについて解説しました。
地域包括ケアシステムの構築や共生社会の実現が現代の日本の福祉のメインテーマとなっている以上、深く関連する重層的支援体制整備事業については今後も試験に出題される可能性が比較的高いと予想されます。
制度の概要と構成する主要の3つの事業については、特に出題されやすいポイントであるため、なるべく覚えておきましょう。
また、包括的支援事業のうちの地域包括支援センターの運営と生活支援体制整備事業、一般介護予防事業の地域介護予防活動支援事業が重層的支援体制整備事業の各事業に含まれるということも覚えておいていいかもしれません。
皆さまが試験に合格できるよう、祈願しております。
まだ出題頻度が掴めないので、認定調査とか地域支援事業のような毎年出題されるポイントの学習がある程度終わったら勉強するのがおすすめですっ