多くの人が気付いていないケアマネジャーの本当の将来性

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ケアマネジャー(介護支援専門員)は、要介護者(要支援者)に対して介護サービスの調整を図る職業です。
介護ニーズは高齢者の増加とともに年々増え続け、ケアマネジャーの存在感はますます大きくなってきています。

ただ、近年ではケアマネジャーの将来性について不安を感じる声が、他ならぬケアマネジャーたちから漏れ出ています。
それはなぜでしょうか。

今回は、誰も気が付いていないケアマネジャーの本当の将来性について解説していきましょう。

①介護を取り巻く現状から見る

日本は既に10年ほど前から「超高齢社会」に突入し、同時に少子化も進んでいます。
高齢者を家族だけで支えることができた時代は今や昔、既に時代は「高齢者を地域全体で支える」形に変化しました。
それに伴い、介護サービスの需要は年々増加しています。
下記の図の通り、需要の増加は介護保険給付費に現れています。

介護給付費は年々増加の一途をたどっています
出典:厚生労働省「令和2年度介護保険事業状況報告」

介護サービスの需要が増加するということは、その調整役を担うケアマネジャーの需要も増加するということになります。
需要という点でみれば、ケアマネジャーの将来性は決して暗いものではありません。
引き続き安定した需要が望め、職に就くのが難しいといった事態は当面来ないものと予想されます。

②人員基準から見る

ところで、ケアマネジャーの配置が義務付けられている介護サービスがどのくらいあるかご存じでしょうか。
以下のようなサービスがケアマネジャーの配置を義務付けています。

介護サービスケアマネジャー配置基準
居宅介護支援事業所①常勤のケアマネジャーを1人以上配置
②利用者35人またはその端数を増すごとに1人配置する
③管理者は主任ケアマネジャー
介護予防支援事業所(地域包括支援センター以外①ケアマネジャーを1人以上配置
②管理者は主任ケアマネジャー
※令和6年度よりスタート
介護保険施設
(介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院)
①常勤専従のケアマネジャーを1人以上配置
②入所者100人またはその端数を増すごとに1人配置する
特定施設入居者生活介護利用者100人につき1人を基準として1人以上配置
認知症対応型共同生活介護事業所ごとに1人配置

このほかにも、小規模多機能型居宅介護や看護小規模多機能型居宅介護では1人配置が義務付けられているなど、ケアマネジャーの配置が必要な介護サービスは多くあります。

特に令和6年度から、居宅介護支援事業所も市町村から直接、介護予防支援の指定を受けることができるようになったため、その状況に対応するために一層ケアマネジャーの人材需要は大きくなってきています。

ケアマネジャー不足を叫ぶ声が日に日に大きくなっている現状、現時点で資格取得後に急激に不足が解消することは考えづらく、その点では将来性は暗いものではありません。

③ケアマネジャーの待遇の流れで見る

令和6年度の『指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準等の改正』の内容が1月15日に正式に決定しました。

そのなかでケアマネジャーの主戦場の1つである居宅介護支援の運営基準が見直され、一部はケアマネジャーの負担軽減が図られています。

またオンラインモニタリングが解禁され、条件付きで利用者の居宅に直接訪問せず、オンラインでモニタリングを行うことができるようになるなど、大きな環境の変化がありました。

参考ニュース

https://www.joint-kaigo.com/articles/20082/(介護ニュースjoint)

また、東京都では都内で勤務しているすべてのケアマネジャーに月額1万円を居住支援特別手当という名目で支給するという独自策を打ち出しました。

参考ニュース

https://www.joint-kaigo.com/articles/19704/(介護ニュースjoint)

このように一部自治体では、ケアマネジャーの待遇や負担を明確に改善方向にシフトし始めました。

この流れは地域格差を生み、対応しないと人材の流出が懸念されるため、他の自治体にも波及していくと予想されます。

人材不足+待遇改善の流れは当面続くと予想され、この点でもケアマネジャーの将来性は暗いものではありません。

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ここまではケアマネジャーの将来性は決して暗いものではないと解説を行ってきました。

しかし、この将来性についての解説はあくまでも客観的に見たものであり、実際にケアマネジャーとして従事している人はこのように感じていないというような声も多々聞かれます。

それでは、ケアマネジャーたちはどのような点に将来性の不安を覚えているのでしょうか。

将来性の不安① 業務が年々増えている

ケアマネジャーは激務というイメージを持つ人は多いのではないでしょうか。
書類作成に事業者との連絡調整に利用者の居宅訪問にサービス担当者会議の開催に請求業務に…

上記のような業務を日々時限付きでこなすのがケアマネジャーです。

実際に業務は介護業界の職種でも特に多忙を極める傾向にあり、ケアマネジャーの資格を取ったものの将来性に疑問を感じ業務に従事しないという人も一定数います。

そのような状況でも、まだ年々業務量が増加しているといった不満の声が多く聞かれます。

現に2024年度介護報酬改定の際の居宅介護支援の運営の見直しにより、利用者への一部説明を義務から努力義務に変更するなど、ケアマネジャーの負担軽減の措置が図られることが決定した一方、以下のような内容が業務をさらに圧迫するのではないかと懸念が生じています。

基本報酬の逓減制の緩和

2023年度までは、居宅介護支援事業所のケアマネジャー1人あたりの担当件数が40名以上になると、逓減制により基本報酬が減額されていました。

2024年度からは、逓減制が適用されるラインが45名以上となることが決定しました。(ICT活用または事務員がいる場合は50名以上)

これによりケアマネジャーが受け持つことができる利用者数が増加しますが、その分負担も増加します。

ケアマネジャーたちがどの程度利用者を受け持つかは、法人の方針に委ねられ、中には現在以上の利用者の担当を余儀なくされキャパオーバーとなる人も出てくるかもしれません。

介護予防支援の指定

従来は介護予防支援は地域包括支援センターのみ指定を受けることができましたが、2024年度からは、要件を満たした居宅介護支援事業所も指定を受けることができるようになります。

これは地域包括支援センターの負担の軽減のための措置ですが、言い換えると「地域包括支援センターの負担の一部を居宅介護支援事業所に担ってもらおう」ということになります。

要介護者は1名で1とカウントされるのに対し、要支援者は3名で1とカウントされるため、要支援者の受け持ちが増加すればケアマネジャーの負担も当然増加すると考えられます。

管理者の業務範囲の拡大

居宅介護支援事業所の管理者は、主任ケアマネジャーでなければなりません。
従来では管理者は兼務不可の常勤専従が原則で、管理上支障がない場合は同一の敷地、または隣接する敷地にある事業所での兼務が可能とされていました。

これが2024年度からは、条件を満たすことにより、離れた事業所の管理者・職員を兼務することができるようになることが決定しています。

つまり、法人の意向により離れた2つの居宅介護支援事業所の管理者を任せられるということも考えられ、事業規模が大きい事業者ほど管理者を担う主任ケアマネジャーの負担が増加する可能性があります。

将来性の不安② ケアマネジャーだけ給料が上がらない

既に介護職に従事している人は、処遇改善加算の恩恵を受けている人も多いでしょう。
この処遇改善加算、ケアマネジャーは対象外です。

介護職の処遇が見直され、徐々に賃金に反映され始めましたが、ケアマネジャーは常にそういった取り組みの対象外とされ、業務の負担に対し賃金が見合っていないことに将来性への不安を感じる声も噴出しました。

「ケアマネより介護職のほうが給料が高い」

「ケアマネジャーに転職すると給料が下がる」

こういった声を耳にしたことのある人もおそらく多いでしょう。
そのような現状がケアマネジャー試験の受験者数にも現れており、2018年には8万人を超える受験生の減少に見舞われました。

上でも解説したように、2023年には東京都がケアマネジャーを含む独自の処遇改善の手当てを支給することを発表したため、その流れが全国へ波及することが期待されています。
しかし2024年度介護報酬改定次第では、さらに将来性への懸念も生じかねないため、その動向が注視されます。

将来性の不安③ 介護保険制度の大幅な変革

介護保険制度は3年ごとに見直しがありますが、介護保健給付費は年々増加し、介護保険料を支払う人はあまり増加していないため、基本的に介護従事者視点では長期的に改悪方向に進むと考えてよいでしょう。

特にケアマネジャーは介護保険制度の変革により、環境が大きく変化することが考えられます。
度々話題になる『ケアプランの有料化』も、いずれは実現することでしょう。

そのような変革があった際に、ケアマネジャーの将来性はかなり不確実なものになります。どうなるかを完全に読むことが困難なのです。

また、現時点ではまだ考えづらいですが、介護保険制度が立ち行かなくなった場合には介護サービスはほとんど自費で受けるものに変化するでしょう。そのような時代が仮に訪れるとしたら、ケアマネジャーの需要は激減するかもしれません。

たびたび話題となる「ケアマネ不要論」により、将来性に漠然とした不安を覚える人もいるのではないでしょうか。

介護サービス事業者とのやり取りや調整は、利用者自身で行うことができるためケアマネジャーは不要といった言説ですが、そもそもケアマネジャーが本当に不要であれば「セルフケアプラン」がもっと一般的になっているでしょう。

そうならないのは、ケアマネジャーが担っている業務が一般の人にとっては複雑かつ煩雑で、時間を割くのが面倒であるからに他なりません。それに現状は居宅介護支援費に利用者負担はありませんからね。

現状ではケアマネが不要となる兆しさえ見えませんので、この点においては将来性を気にしないで問題ないと思われます。

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ここまでは一般的に言われているケアマネジャーの将来性について解説してきました。
ここからは筆者の考えるケアマネジャーの将来性について述べさせていただきますが、先に結論から書くと「今より明暗がくっきりと分かれる」と予想しています。あくまでも予想であるため、予めご了承ください。

やぴぃ

ケアマネは人不足だしやることも年々多くなっていくし…どうなっちゃうんだろっ

①ICT導入や業務効率化による影響

ケアマネジャーの業務は、介護業界のなかで最もICT活用や業務効率化の恩恵を受けると考えられます。
むしろ業務効率化を図らなければ、膨大な仕事量を捌くことができず、受け持つことができる利用者が事業所で増加しません。

そうなると、介護事業所の淘汰の流れが始まった現在、事業者は生き残りを図ることが難しくなるでしょう。

そのため10年後~は、今より事業者がケアマネジャーに求める能力の基準が高くなっていると予想されます。
業務効率化ができるケアマネジャーであれば将来性は十分にあり、時代の流れについていけないケアマネジャーであれば将来性はやや暗いものになるかと思われます。

②ケアプラン有料化となった場合の影響

ケアプランの有料化の声は、数年前から介護保険制度の改正があるたびに聞かれています。
2024年度には見送りとなったものの、将来的に有料化は避けられないでしょう。

ケアプランが有料化されると、利用者本人または家族が直接居宅介護支援事業所に問い合わせをする件数が多くなると予想されます。
私が高齢者ならば、同じ金額を支払うなら、より自分に合ったケアマネジャーに担当して欲しいと考えます。

こうなった場合、人気化するケアマネジャーや事業所、不人気化する者が明確化すると考えられ、人気化した場合の将来性は明るいでしょう。

③人材の需給の変化の影響

現在はケアマネジャーの深刻な人不足が表面化してきているため、現在は供給が足りない状況です。
これはケアマネジャーの負担が増大し、ケアマネジャー離れが進む一因とされていますが、逆に言えば多くの事業所がケアマネジャーを欲している状況であると言えます。
つまりこの状況が続いている間は、ケアマネジャーの仕事で食いっぱぐれることはありません。

ただこの状況が需要に対して供給が多すぎる状況に変化したとき、将来性が一転します。
待遇の急改善などにより、急激にケアマネジャー希望者が増えた場合は注意が必要となります。

現状は、雇用という面だけで言えばケアマネジャーはかなり恵まれています。
しかしケアマネジャーが求人に対して多すぎる状況に変化すれば、たちまち、「簡単に安く雇うことができる人材」となり、雇用面での将来性は揺らぐことでしょう。

ケアマネジャーは、介護の需要が増加し続ける限り、仕事がなくなるといったことはまずありません。
ケアマネジャー廃止論などが度々話題になることがありますが、廃止となる兆しさえ見られないため現時点で心配するのは杞憂でしょう。

ただ、ケアマネジャーの視点では年々業務量が増加し、人不足もあって負担が増加しているため、将来性に不安を覚える人も少なくありません。
介護業界の環境は年々大きく変化しており、数年後にガラッと環境が変わることも十分に考えられます。

実際のところ、将来がどのようになるかは誰にも分かりません。
仮に現状よりも競争が苛烈な環境となった場合でも、ケアマネジャーとして生き残るためには環境に対応し能力を高めていくことが重要となるでしょう。

やぴぃ

いっぱい勉強して市場価値ってやつを上げていこうっ!

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この記事を書いた人

ケアマネでまんねん運営者
主に問題の作成と解説作成担当。
ケアマネジャー試験の独学による学習をサポートし、みなさんが最短で合格するため、実践問題や一問一答、解説について書いています。