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介護サービス情報の公表制度は2006年4月からスタートした制度です。
近年のケアマネジャー試験では出題の常連であり、設問としては直近5年の試験では第23回試験以外で出題されています。
第23回試験でも選択肢の1つとして出題がされているため、今年度の試験でも出題される可能性は高いと思われます。
ただ試験の範囲のなかでも最も勉強に苦戦するポイントの1つで、どのように勉強すればいいか分からない受験生もいるのではないでしょうか。
この記事では、過去のケアマネジャー試験の出題の傾向から、まだ出題されたことのない覚えるべきポイントを含め、試験勉強のためのポイント解説していきます。
介護サービス情報の公表制度とは
介護サービス情報の公表制度は、日本の介護保険制度において、利用者やその家族が介護サービス事業者を選ぶ際の参考となる情報を提供することを目的とした制度です。
この制度は、介護サービスの質の向上と透明性の確保を図るために設けられています。
介護サービス事業者は都道府県知事に対して報告を行います。
これは指定権者が市町村長のサービスでも同様です。
例題)居宅介護支援事業者は介護サービス情報を都道府県知事に報告する。
報告を行うタイミングは次の通りです。
- 介護サービスの提供開始時
- 都道府県の報告計画策定時
都道府県の報告計画は1年に1回の策定されます。
そのため、事業者は介護サービスを新たに始めるときと、事業開始年の翌年から1年に1回報告を行わなければなりません。
報告は義務であり、未報告の場合には都道府県知事が是正指導や報告命令、調査を行うことができます。
これでも改善されない場合には、指定の取消や指定の効力の停止をすることができます。
地域密着型サービスと居宅介護支援の事業者が誰に対して報告を行うか確認しておこうっ
公表制度における調査
都道府県知事は報告を受けた情報を基に、介護サービス事業者に対して調査を行うことができます。
大抵の場合は調査機関に委託して調査が行われます。
調査員は都道府県知事が選任します。
調査員となるには調査員名簿に登録されていることが要件となっています。
また調査機関や調査員は公務員扱いとなるため、守秘義務が課せられます。
報告を行わなくていいケース
すべての事業者に公表制度の報告が義務付けられていると考えられがちですが、報告しなくてもいいケースがあります。
- 居宅療養管理指導事業者
- (介護予防)訪問看護、(介護予防)訪問リハビリテーション、(介護予防)通所リハビリテーション、(介護予防)短期入所療養介護の対象サービスを提供している「みなし指定事業所」であって、指定があったものとみなされた日から起算して1年を経過しない事業所
- 都道府県の報告計画基準日の前1年間の介護報酬支払実績額が、利用者負担分を含めて100万円に達していない。
報告しなくていいケースはまだ試験に出題されたことがないから、余裕があったら覚える程度でっ
ケアマネジャー試験での出題傾向
介護サービス情報の公表制度に関する設問の出題は、令和になってから5回(第22回再試験を含む)出題されています。
第26回試験
介護サービス情報の公表制度において、介護サービスの提供開始時に事業者が都道府県知事へ報告すべき情報として規定されているものはどれか。3つ選べ。
1 従業者の個人情報保護等のために講じる措置
2 従業者の教育訓練の実施状況
3 年代別の従業者の数
4 従業者の労働時間
5 従業者の健康診断の実施状況
第26回 介護支援専門員実務研修受講試験 問題15解答をみる
正解 2,4,5
第25回試験
介護サービス情報の公表制度について正しいものはどれか。3つ選べ。
1 原則として、介護サービス事業者は、毎年、介護サービス情報を報告する。
2 指定居宅介護支援事業者は、介護サービス情報をその事業所の所在地の市町村長に報告する。
3 介護サービス情報の公表は、事業所又は施設の所在地の国民健康保険団体連合会が行う。
4 職種別の従業者の数は、公表すべき事項に含まれる。
5 指定居宅サービス事業者が報告内容の是正命令に従わないときには、指定を取り消されることがある。
第25回 介護支援専門員実務研修受講試験 問題14解答をみる
正解 1,4,5
第24回試験
介護サービス情報の公表制度における居宅介護支援に係る公表項目として正しいものはどれか。3つ選べ。
1 サービス担当者会議の開催等の状況
2 入退院に当たっての支援のための取組の状況
3 ターミナルケアの質の確保のための取組の状況
4 利用者のプライバシーの保護のための取組の状況
5 身体的拘束等の排除のための取組の状況
第24回 介護支援専門員実務研修受講試験 問題15解答をみる
正解 1,2,4
第22回再試験
介護サービス情報の公表制度について正しいものはどれか。3つ選べ。
1 国民健康保険団体連合会は、報告された内容が事実かどうかを調査しなければならない。
2 介護サービス事業者のうち、指定地域密着型サービス事業者は、介護サービス情報を市町村長に報告しなければならない。
3 都道府県知事は、介護サービス事業者が相談・苦情等の対応のために講じている措置を公表しなければならない。
4 都道府県知事は、介護サービス事業者が介護サービスの質の確保のために総合的に講じている措置を公表しなければならない。
5 都道府県知事は、介護サービス事業者が利用者の権利擁護等のために講じている措置を公表しなければならない。
第22回再試験 介護支援専門員実務研修受講試験 問題15解答をみる
正解 3,4,5
第22回試験
介護サービス情報に係る事業者の報告について正しいものはどれか。3つ選べ。
1 指定居宅サービス事業者は、その介護サービス情報を都道府県知事に報告しなければならない。
2 指定地域密着型サービス事業者は、その介護サービス情報を市町村長に報告しなければならない。
3 介護サービス事業者がその介護サービス情報を報告しなかった場合には、その指定又は許可が取り消されることがある。
4 介護サービス事業者がその介護サービス情報を報告するのは、その介護サービスの提供を開始するときのみである。
5 介護サービス事業者が報告する介護サービス情報には、第三者による評価の実施状況が含まれる。
第22回 介護支援専門員実務研修受講試験 問題13解答をみる
正解 1,3,5
なお第23回試験では設問こそなかったものの、「居宅サービス事業者が市町村長に介護サービス情報の報告を行うか」といった選択肢の出題がありました。
過去問を眺めてみると、「各サービス事業者が誰に介護サービス情報を報告するのか」についての選択肢が目立ちます。公表項目に関して問う設問以外の試験回ではほぼ出題されていました。
また国民健康保険団体連合会のワードが出てくる選択肢もよくみられます。
この出題傾向から、公表項目ではなく介護サービス情報の公表制度全体について問う設問が出題された場合には、次の2つのポイントさえ覚えておけば不正解となる可能性がグッと減るかもしれません。
- どのサービス事業業者であっても都道府県知事に報告する。
- 国民健康保険団体連合会は介護サービス情報の公表制度に一切関係ない。
公表項目について問われなければ、実は結構ボーナス問題だよっ
また各試験回における公表項目に関する選択肢の数は次のようになっています。
試験回 | 公表項目に関する選択肢数 |
---|---|
第26回試験 | 5 |
第25回試験 | 1 |
第24回試験 | 5 |
第22回試験 | 0 |
第21回試験 | 5 |
第18回試験 | 0 |
第17回試験 | 1 |
第16回試験 | 3 |
第15回試験 | 1 |
こうしてみると、近年の試験では公表制度全体を問う設問と、公表項目をピンポイントで問う設問が隔年で出題されるようになってきているように見て取れます。
今後もこの傾向が続くかはわかりませんが、この出題傾向が続くなら第27回試験は公表制度全体を問う設問が出題されるかもしれませんね。
公表項目の覚えるべきポイント
そうは言っても、第27回試験に公表項目をピンポイントで問う設問が出題されないとは限りません。
そのためヤマを張って勝負に出る人以外は基本的にポイントを押さえておく必要があります。
公表項目には、基本情報、運営情報、事業所の特色がありますが、このうち試験で重要となるのは基本情報と運営情報です。これらは報告が必須の情報であり、事業所の特色は報告が任意となります。
ただ公表項目は各サービスごとに異なるため、単純にすべて覚えようとすると多くの時間が必要となります。そこで、過去の試験の出題をベースに特に覚えるべき公表項目を次のようにピックアップしました。
基本情報(各サービス共通)
事業者の所在地や名称や連絡先など
事業所の名称、サービスの種類、連絡先など
生活保護の指定、登録喀痰吸引等事業者、事業所までの主な利用交通手段なども含まれる。
従業員の数、勤務形態、労働時間、従業員1人あたりの利用者数
従業員の介護サービスに従事した経験年数
従業員の健康診断の実施状況
従業員の研修状況 など
苦情窓口の設置状況、第三者による評価の実施状況、利用者への提供実績利用者への提供実績など
運営方針やサービスの特色なども含む。
介護給付以外の料金、社会福祉法人の負担軽減制度利用の実施の有無、利用者都合でのサービス未利用時の費用など
基本情報について覚えるべきポイントは上記となります。
従業員に関する項目は第26回試験にも出題されていました。
全てを網羅しているわけではありませんが、試験に出題されやすいポイントであるため目を通しておくことをお勧めします。
運営情報(各サービス共通)
- 利用者等の権利擁護のために講じている措置
- 介護サービス質確保のために講じている措置
- 相談、苦情のために講じている措置
- 評価、改善のために講じている措置
- 外部との連携
- 適切な事業運営の確保のために講じている措置
- 運営、業務分担、情報の共有のために講じている措置
- 安全管理、衛生管理のために講じている措置
- 情報管理のために講じている措置
- 質確保のために総合的に講じている措置
- 説明と同意の取得状況
- プライバシー保護の取組状況
- 介護サービスに係る計画の見直し実施状況
- 介護支援専門員等や主治医との連携状況
- 倫理、法令等の周知実施状況
- 透明性確保のための取組状況
- 従業者間での情報共有の取組状況
- 安全管理および衛生管理のための取組状況
- 個人情報保護の取組状況
- 記録の開示の実施状況
運営情報に関する公表項目は大項目、中項目、小項目に分かれています。
試験で出題されやすいのは中項目および小項目です。
小項目はかなり細分化されているため、記事でピックアップしているのは1/3ほどです。
これらはケアマネジャー試験に出題される可能性が高いものですので、なるべく覚えておくことをおすすめします。
完全な運営情報の中項目、小項目についてはこちらのwebサイトをご覧ください。※外部リンク
居宅介護支援の公表項目
- 介護支援専門員の男女の人数
- 従業者である介護支援専門員が有している資格
- 介護支援専門員1人当たりの利用者数
- ケアマネジメントの公正中立性の確保
居宅介護支援の公表項目については第24回試験に出題されたため、今後も出題される可能性があります。
今後試験に新規で出題される可能性があるのが、基本情報の上記の表の項目です。
運営情報については、過去の試験に出題されたようにターミナルケアの質や身体拘束排除に関する項目がないことに注意が必要であるものの、ほぼ共通項目と同様であるためそこまで注意する必要はないかと思われます。
ただ、2024年度より居宅介護支援でも身体拘束の適正化に関する指針が義務付けられたため、今後の公表項目に身体拘束排除に関する項目は追加される可能性があります。
居宅介護支援以外のサービス・施設の公表項目は多分出題されないんじゃなかなっ。細かすぎるしっ
以上が公表項目について、特に試験で出題されやすいと予想される項目についてです。
なお、介護サービスの提供開始時は基本情報だけ報告義務があり、運営情報は報告しなくてもよいとされています。
これを知らないと公表項目に関する出題はかなり苦戦しますので、絶対に覚えておきましょう。
試験勉強のコツは引き算
介護サービス情報の公表制度といっても、試験に出題されるような公表項目は各サービスごとに異なるため単純にすべて覚えようとすると、多くの時間が必要となります。
そのため、ケアマネ試験では膨大な情報からポイントを絞って勉強することが何よりも重要となります。
この記事に記載した基本情報、運営情報、居宅介護支援の公表項目は試験上重要なポイントとなりますので、ぜひ覚えてみてください。
居宅介護支援以外のサービスの公表項目については、細かい情報となり試験に出題される可能性は低いと思われますので、基本的に勉強しなくていいかと思われます。
皆さまがケアマネジャー試験に合格できるよう、祈願しております。
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