この記事の学習優先度は”高い”です。
高額介護(予防)サービス費は、介護保険制度における「利用者負担を軽くするための給付」です。
ケアマネジャー試験にも度々出題がみられ、特に利用者負担軽減や低所得者に対する対策のなかでは最も高頻度で出題がみられます。
この記事では、高額介護サービス費についてケアマネジャー試験に出題されやすいポイントについて、出題歴に基づきわかりやすく解説していきます。
なお、高額介護サービス費と高額介護予防サービス費では、その対象(要介護者か要支援者か)以外違いがなく、一律に高額介護サービス費と表記しています。
高額介護サービス費とは
高額介護サービス費は、世帯あたりの所得に応じて設定された1ヶ月の利用者負担上限額を、利用者の自己負担分が超えた場合に支給される介護給付です。
この利用者の自己負担分とは、利用者(入所者、入居者)が介護保険上のサービスを利用したときの定率負担のことです。
完全自費の部分は含まれませんっ!
例
通所介護利用時の1割負担部分: 対象
短期入所生活介護の食費: 対象外
対象となる条件は、要介護者・要支援者であることだけです。
生活保護制度の被保護者も給付対象です。
給付方法としては、償還払いでの給付となります。
高額介護サービス費の負担上限額
世帯あたりの利用者負担上限額は政令で定められています。
2020年介護保険法改正により、2021年8月1日から、現役並みの所得がある場合には負担上限額が引き上げられました。
つまり高所得者ほど世帯あたりの負担上限額が大きくなり、利用者負担も大きくなる制度になったということになります。
対して、生活保護の被保護者の世帯や住民税非課税の世帯は利用者負担が低く設定されています。
この負担上限額の具体的な数字については、ケアマネジャー試験で出題される可能性は低いため、詳細はこちらでご覧ください。※外部リンク
高額介護サービス費の対象外
高額介護サービス費は介護サービス利用時の利用者負担を軽くしてくれる給付ですが、次のような対象外となるものもあります。
① 特定福祉用具の購入にかかる負担
② 住宅改修にかかる負担
③ 施設サービスの居住費、短期入所系サービスの滞在費、食費
④ 施設サービス、短期入所系サービスの理美容代などの実費部分
⑤ 居宅介護支援費、介護予防支援費
⑤の居宅介護支援費や介護予防支援費は、そもそも利用者負担分がないため対象外となっています。
ではここで1つ問題を出すよっ
問 高額介護サービス費の給付対象となる費用について正しいのはどれか。2つ選べ。
1. 介護老人保健施設におけるおむつ代
2. 通所リハビリテーションにおけるおむつ代
3. 短期入所療養介護におけるおむつ代
4. 小規模多機能型居宅介護におけるおむつ代
5. 特定施設入居者生活介護におけるおむつ代
解答をみる
正解 1、3
おむつ代が介護保険給付に含まれているか否かの判別と、高額介護サービス費の理解が求められる複合問題です。
実際はこのようなおむつ代にフォーカスした設問が出題される可能性は、出題傾向的にかなり低いと思いますので、あくまでも介護給付の理解を深めるものとして捉えてみてください。
施設系、短期入所系サービスはおむつ代が介護給付に含まれるため、高額介護サービス費の給付対象です。
特定施設入居者生活介護や認知症対応型共同生活介護、通所系サービス、小規模多機能型サービスではおむつ代は保険給付対象外ですので、利用者負担分について高額介護サービス費の給付対象外となります。
高額介護サービス費についての出題傾向
過去15回の試験のうち、高額介護サービス費が単語として出題された回数は9回です。
令和に入ってからの5回の試験では3回出題されています。
設問として高額介護サービスについて問われたことは、確認できる範囲では平成29年(第20回)試験の1回です。
高額介護サービス費の支給について正しいものはどれか。2つ選べ。
1 .第1号被保険者である生活保護の被保護者は、対象とならない。
2 .居宅要支援被保険者は、対象とならない。
3 .施設サービスの食費は、対象となる。
4 .施設サービスの居住費は、対象とならない。
5 .負担上限額は、所得によって異なる。
第20回介護支援専門員実務研修受講試験 問7解答をみる
正解 4,5
令和の試験では出題された3回とも給付方法に関するものについての出題が目立ちます。
令和5年 問8
介護保険法において現物給付化されている保険給付として正しいものはどれか。2つ選べ。
1 .居宅介護サービス計画費の支給
2 .特定入所者介護サービス費の支給
3 .居宅介護福祉用具購入費の支給
4 .高額介護サービス費の支給
5 .高額医療合算介護サービス費の支給
第26回介護支援専門員実務研修受講試験 問8解答をみる
正解 1,2
令和2年 問7
介護サービスに係る利用者負担が高額となった場合の取扱いについて正しいものはどれか。3つ選べ。
1 .高額介護サービス費の負担上限額は、被保険者の家計に与える影響を考慮して、段階的に設定されている。
2 .高額介護サービス費の負担上限額を超えた利用料は、常に現物給付となるため、利用者が直接事業者に支払う必要はない。
3 .高額介護サービス費は、世帯単位で算定される。
4 .施設介護サービス費に係る利用者負担は、高額介護サービス費の対象となる。
5 .高額医療合算介護サービス費は、医療保険から支給される。
第26回介護支援専門員実務研修受講試験 問7解答をみる
正解 1,3,4
令和元年再試験 問7
介護保険法において現物給付化されている保険給付として正しいものはどれか。2つ選べ。
1 .居宅介護福祉用具購入費の支給
2 .施設介護サービス費の支給
3 .居宅介護住宅改修費の支給
4 .特定入所者介護サービス費の支給
5 .高額介護サービス費の支給
第26回介護支援専門員実務研修受講試験再試験 問7解答をみる
正解 2,4
現状の出題傾向に沿って考えるならば最優先で覚えるべきは、高額介護サービス費は「償還払い」で給付されるという点かと思われます。
次いで、世帯単位で算定される点、所得に応じて負担上限額が異なる点などの給付自体の理解を深めていくことがおすすめです。
まとめ
高額介護サービスについては、過去15年間の半数以上の試験に何らかの形で現れています。
そのため2024年の試験でも出題される可能性があると考えられるでしょう。
勉強の時間を確保することが難しい場合には、特に試験上重要となる「償還払いでの給付」ということは最低限覚えておき、試験に臨むことをおすすめします。
皆さまがケアマネジャー試験を合格できるよう祈願しております。