この記事の学習優先度は”非常に高い”です。
はじめに
包括的支援事業は地域支援事業の1つで、高齢者が住み慣れた地域で居宅において生活を続けることができるよう、地域のケアマネジメントを総合的に行う事業です。
市町村の必須事業でもあります。
令和になってからのケアマネジャー試験では設問として3回出題(第22回、第25回、第26回)されており、選択肢としての出題を含めると5回すべてで出題されている頻出ポイントの1つとなっています。
このページでは包括的支援事業の解説をケアマネジャー試験受験者向けに行っていきます。
包括的支援事業の事業内容
包括的支援事業は地域包括支援センターの運営と4つの社会保障充実分の事業で構成されています。
包括支援センターの事業も4つあるため、試験対策としては計8つの事業を覚える必要があります。
それぞれ解説していきましょう。
地域包括支援センターの事業
地域包括支援センターの事業は次のとおりです。
介護予防ケアマネジメント事業(第1号介護予防事業)
介護予防を目的とした事業で、対象は要介護状態となりそうな高齢者(65歳以上)です。
要支援者への介護予防ケアマネジメントは介護予防・日常生活支援総合事業で行われます。
介護予防ケアプランを作成して介護予防事業、例えば第1号訪問介護事業や第1号通所介護事業などが適切かつ効率的に提供されるよう必要な支援を行う事業となっています。
なお介護予防ケアマネジメントは、地域包括支援センターから居宅介護支援事業者に委託することが可能です。
総合相談支援事業
地域の高齢者がその人らしい生活を送り続けることができるよう、必要な支援の把握や、地域のサービスや制度を高齢者と繋げることを目的とした事業です。
次のようなことを行います。
- 家族を介護する者に対する相談対応
- 地域におけるネットワークの構築
- 地域の高齢者の状況の実態の把握
- 総合相談支援
※令和6年6月追記
総合相談支援事業については、令和6年度より地域包括支援センターが居宅介護支援事業者にその業務の一部を委託することができるようになりました。
権利擁護業務
介護支援専門員や地域の住民、民生委員などでは解決が難しい困難事例にあたる高齢者に対して、尊厳のある生活を送ることができるよう専門的見地から支援を行うことを目的とした事業です。
次のような事を行います。
- 成年後見制度の活用促進
- 困難事例への対応
- 高齢者虐待への対応
- 措置による入所の支援
- 消費者被害の防止
包括的・継続的マネジメント支援業務
介護支援専門員に対する後方支援を行うことを目的とした事業です。
次のような事を行います。
- 介護支援専門員への日常的な指導・助言
- 困難事例を抱えた介護支援専門員への助言
- 地域の介護支援専門員のネットワーク構築
- 包括的・継続的なケア体制の構築
市町村は地域包括支援センターの運営については、その業務をすべて一括で地域包括支援センターに委託しなければなりません。
つまり権利擁護だけ地域包括支援センターに委託する、といったことはできません。
ちょっとここまで、混同しやすいから流れを整理してみたよっ
市町村が、地域包括支援センターの運営(介護予防ケアマネジメント、総合相談業務、権利擁護業務、包括的・継続的ケアマネジメント支援業務)を一括して委託します。
市町村から委託を受けた地域包括支援センターの運営業務のうち、地域包括支援センターは居宅介護支援事業者に介護予防ケアマネジメントと総合相談業務の一部を委託することができます。
市町村が直接、居宅介護支援事業者に委託するわけではないため、注意してください。
なお、ここまで包括支援センターの事業について解説を行ってきましたが、ケアマネジャー試験での重要度は高くありません。
事例問題で包括的・継続的マネジメントに少し触れるような出題が平成27年度の試験に、包括支援センターの業務の委託についての出題が令和元年の試験にありました。(なお令和元年の試験分の出題は、令和6年度介護保険法改正により問題不成立)
そのため、余裕があれば覚えておきましょう。
次に解説する社会保障充実分の事業については非常に重要度が高くなります。
社会保障充実分の事業
社会保障充実分の事業は次の通りです。
在宅医療・介護連携推進事業
在宅医療・介護連携推進事業は医療と介護の両方を必要とする高齢者に対して、地域で暮らし続けることができるよう医療機関と介護保険事業所等の連携を推進する事業です。
次のような内容をPDCAサイクルに沿って行います。
地域の医療・介護の資源の把握や在宅医療・介護連携の課題の抽出と対応策の検討を行う。
現状分析・課題抽出・施策立案で検討した対応策を実施する。
具体的には医療・介護関係者が在宅医療・介護連携について相談できる窓口の設置や医療・介護関係者との協働・連携を深めるための研修実施の支援など。
対応策の評価を行い地域包括ケアシステムの実現のために改善点を抽出し、次に繋げる。
① 地域の医療・介護の資源の把握
② 在宅医療・介護連携の課題の抽出と対応策の検討
③ 切れ目のない在宅医療と在宅介護の提供体制の構築推進
④ 医療・介護関係者の情報共有の支援
⑤ 在宅医療・介護連携に関する相談支援
⑥ 医療・介護関係者の研修
⑦ 地域住民への普及啓発
⑧ 在宅医療・介護連携に関する関係市区町村の連携
生活支援体制整備事業
生活支援体制整備事業は、市町村が中心となり多様な事業主体と連携しながら、多様な日常生活上の支援体制の充実・強化及び高齢者の社会参加の推進を一体的に図っていくことを目的とした事業です。
生活支援体制整備事業については、どのような事業を行っているかより、どのようなものを配置するかがケアマネジャー試験では重要となってきます。
次のようなものの配置が生活支援体制整備事業に含まれます。
生活支援コーディネーター
生活支援コーディネーターの仕事は次の通りです。
仕事 | 内容 |
---|---|
社会資源の把握、新しい福祉サービスの開発と育成 | 地域に不足している社会資源やサービスの開発やそのサービスを担う人材の育成 |
新しい福祉ネットワークの構築 | 公的機関や地域住民、NPOや民間事業者などとの連携を図るための仲立ち、情報共有の円滑化など |
ニーズと取組みのマッチング | 地域の実情を踏まえてニーズを掘り起こし、そのニーズに合ったサービスを発掘し適切な事業所や機関に繋げる |
協議体の設置
市町村が主体となって、生活支援コーディネーターと生活支援等サービスの多様な提供主体等が参画する定期的な情報の共有・連携強化の場として協議体が設置されます。
構成員としては、地域包括支援センター、生活支援コーディネーターのほかNPO法人や社会福祉法人、ボランティア団体から民間企業など地域の関係者が挙げられます。
地域の高齢者を支えるために必要不可欠な者が構成員となるため、上記以外にも多数、当てはまります。
協議体の役割は次の通りです。
・生活支援コーディネーターの組織的な補完
・地域ニーズ、既存の地域資源の把握、情報の見える化の推進(実態調査や地域資源マップの作成等)
・企画、立案、方針策定を行う場(生活支援等サービスの担い手養成に係る企画等を含む。)
・地域づくりにおける意識の統一を図る場としての機能
・情報交換の場、働きかけの場としての機能
就労的活動支援コーディネーター
就労的活動支援コーディネーターの仕事は、就労的活動の場を提供できる民間企業・団体等と就労的活動の取組を実施したい事業者等とのマッチングです。
高齢者個人の特性や希望に合った活動をコーディネートすることにより、役割がある形での高齢者の社会参加等を促進します。
地域の実情に応じて配置されるため、配置人数についての規定はありません。
認知症総合支援事業
認知症総合支援事業は、「認知症初期集中支援推進事業」と「認知症地域支援・ケア向上事業」、「認知症サポーター活動促進・地域づくり推進」の3つに分けられます。
認知症初期集中支援推進事業
認知症初期集中支援チームを配置し、認知症の早期診断、早期対応に向けた支援を実施します。
支援対象は原則として40歳以上かつ在宅で生活していて認知症が疑われる者または認知症と診断されている者であって次の条件に当てはまる者
① 医療サービスや介護サービスを受けていない、または中断中
② 医療サービスや介護サービスを受けているが、認知症症状が顕著で対応に苦慮している
構成員としては医師、看護師などの医療保健福祉関連の国家資格者、介護支援専門員またはこれに準ずる者であって市町村が認めた者が挙げられる。
必ず専門医が1人構成員にいなければならない。
認知症地域支援・ケア向上事業
認知症地域支援推進員を配置し、認知症の人やその家族を支援する相談業務など行ったり、地域における認知症ケア向上を図ります。
①医療と介護の支援ネットワークの構築
②施設や事業所、病院などの認知症対応力向上のための支援
③認知症カフェの設置
④介護をする家族向けの介護教室の開催
⑤若年性認知症の人の社会参加支援
認知症サポーター活動促進・地域づくり推進
チームオレンジコーディネーターを配置し、認知症の人が地域で自分らしく生きていけるような共生社会の実現のための地域づくりの推進を行います。
チームオレンジコーディネーターは地域包括支援センターに1名以上配置されます。(市町村本庁や認知症医療疾患センターなどにも配置されます。)
なおチームオレンジコーディネーターと認知症地域支援推進員は兼務することが可能です。
その業務は次のようなものがあります。
・チームオレンジの立ち上げ
・認知症の人やその家族とチームオレンジとのマッチング
・認知症サポーターを取りまとめチームオレンジに編成
・若年層へのチームオレンジへの参加の働きかけ など
なおチームオレンジの活動内容は、地域高齢者への声掛けや見守り、話し相手、外出支援などがあります。
地域ケア会議推進事業
その名の通り地域ケア会議を推進する事業です。
地域ケア会議とは高齢になっても、できる限り住み慣れた地域で自分らしく安心して暮らし続けられるまちづくり(地域包括ケアシステムの実現)に向けた一つの手法として、高齢者個人に対する支援の充実とそれを支える社会基盤の整備(地域づくり)を同時に図っていくことを目的とした会議です。
包括的・継続的マネジメント業務の効果的実施を図るために行われます。
構成員には、保健医療及び福祉に関する専門的知識を有する者、介護支援専門員、民生委員やその他関係者が挙げられます。
設置は市町村の努力義務であるため、必須ではありません。
地域ケア会議の主催者は市町村または地域包括支援センターです。
地域ケア会議の機能としては次のようなものがあります。
①個別課題の解決
②地域包括支援ネットワークの構成
③地域課題の発見
④地域づくり、資源開発
⑤政策の形成
地域ケア会議の役割については実際に過去のケアマネジャー試験にも設問として出題されていたよっ!
なお社会保障充実分の事業4つのうち、地域ケア会議推進事業以外は地域包括支援センター以外に委託することができます。
また、地域ケア会議は大まかに2つの種類分かれています。
実際は市町村ごとに種類が細分化されているケースも多いですが、ケアマネジャー試験上は次の2種類を覚えておいてください。
地域ケア個別会議
個別ケースについて多職種間での連携を図り解決やその方法について検討を行ったり、個別ケースの積み上げによって地域課題の発見を行ったりする目的で行われる会議。
地域ケア推進会議
地域ケア個別会議で抽出された地域課題について、地域づくり・社会資源の開発や必要な施策の充実によって解決していくことで、高齢者の支援の土台となる社会基盤の整備を図ることを目的として行われる会議。
確認一問一答テスト
問1 包括的支援事業に生活支援体制整備事業は含まれる。
問2 包括的支援事業のうち権利擁護は地域包括支援センター以外に委託することができない。
問3 チームオレンジコーディネーターは在宅医療・介護連携推進事業で配置される。
まとめ
以上が包括的支援事業8つのポイントについての解説でした。
ケアマネジャー試験で特に重要となるのは、包括的支援事業のうちの社会保障充実分です。
そのため、まずは社会保障充実分の4つの事業について名称だけでも覚えてしまうことをお勧めします。
地域包括支援センターの運営事業については、試験にはあまり出題されたことがないため、学習を後回しにしてもいいかもしれません。
ただし、地域包括支援センターの介護予防支援事業者としての人員基準や運営基準、業務などの内容は重要となるため必ず確認しておきましょう。
包括的支援事業に関する一問一答問題が別ページにあるからよかったらチャレンジしてみてねっ
包括的支援事業についての詳細なケアマネジャー試験対策についてはこちらのページをご覧ください。
実際の過去に出題された問題のデータをもとに、特に試験上、重要となると予測されるポイントについて解説しています。
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