新人ケアマネでも分かる退院退所加算の要件とカンファレンスの参加者について

居宅介護支援事業所の加算の1つである、「退院退所加算」。
算定要件とカンファレンスの参加者が分かりづらく、算定を諦めてしまうケアマネも少なくありません。

この記事では以下のポイントを、新人ケアマネでも分かりやすいよう解説しています。

  • 退院退所加算の算定要件
  • 退院退所加算を算定するカンファレンスの参加者の条件
  • 退院退所加算に関するよくある疑問
やぴぃ

面倒だから初回加算でいいや!から卒業してみようっ!

この記事を読む方のほとんどは、現役の居宅介護支援事業所のケアマネまたは目指す人かと思われます。
そのため概要には軽くしか触れません。
「そもそもどんな加算?」という方には、みなさまお馴染みのカイポケさんをご覧ください。かなり詳しく載っているためオススメです。

以下が簡単な分類表です。

分類情報提供回数カンファレンス参加単位数
Ⅰイ1回無し450単位
Ⅰロ1回必須600単位
Ⅱイ2回無し600単位
Ⅱロ2回1回以上必須750単位
3回1回以上必須900単位

なおこの情報提供は、必ず利用者が退院する医療機関(介護保険施設)職員と面談して受けなければなりません。
面談はテレビ電話も可となっています。その場合利用者及び家族の同意は必須です。

また、情報提供を受けた後の居宅サービス計画の作成は必須です。
本人家族の意向やサービスに変更がなくても、退院退所加算を算定する場合には作成しなければなりません。

Ⅰロ、Ⅱロ、Ⅲを算定する場合には、利用者および家族へのカンファレンスの記録の交付、交付した記録の写しの保管も算定要件に含まれているため注意しましょう。

前提として算定が不可のケース

以下の場合、退院退所加算を算定することはできません。

  • 居宅介護支援事業所で初回加算を算定する場合
  • 特養、地域密着型特養で在宅・入所相互利用加算を算定する場合

退院退所加算を算定する条件であるカンファレンスの参加者は、医療機関介護保険施設で異なります。

カンファレンスの参加者の条件を満たしていない場合、カンファレンスという名で開催されていても加算を算定できないため注意してください。

医療機関の開催するカンファレンスの参加者

ここでいう医療機関とは、病院と診療所です。
医療機関で開催されるカンファレンスの参加者は、次の要件を満たしていなければなりません。

スクロールできます
医療機関側在宅支援側
参加者医師や看護師等①在宅療養担当医療機関の医師又は看護師等
②歯科医師もしくはその指示を受けた歯科衛生士
③保険薬局の保険薬剤師
訪問看護ステーションの看護師等(准看護師は×)、理学療法士、作業療法士若しくは言語聴覚士
⑤ケアマネジャー
⑥相談支援専門員
必要人数いずれか1人以上①~⑥から3人以上
ただし同一サービス、同一事業所からの参加者は複数人でも1とする。

つまり合計4人以上(医療機関側1人+在宅支援側3人)は参加が必須となります。

カンファレンスの要件を満たす例、満たさない例は以下の通りです。

カンファレンスの要件を満たす例
  • 入院先医療機関の医師、訪問診療の医師、訪問看護ステーションの看護師、ケアマネジャー
  • 入院先医療機関の看護師、在宅でのかかりつけ医、訪問看護ステーションの作業療法士、ケアマネジャー
  • 入院先医療機関の医師看護師、保険薬局の薬剤師、訪問歯科の歯科医の指示を受けた歯科衛生士、ケアマネジャー

ケアマネジャーは参加しなくてもカンファレンスは成り立つのですが、参加しないことには退院退所加算を算定できないため便宜上すべての例に入れています。

カンファレンスの要件を満たさない例A
  • 入院先医療機関の医師看護師、訪問看護ステーションの看護師、介護支援専門員

上記の例では参加者が4人であるものの、在宅支援側の参加者が2人であるため要件を満たしていません。

カンファレンスの要件を満たさない例B
  • 入院先医療機関の医師、〇〇訪問看護ステーションの看護師、△△訪問看護ステーションの看護師、ケアマネジャー
  • 入院先医療機関の看護師、▽▽訪問看護ステーションの看護師、▽▽訪問看護ステーションの理学療法士、ケアマネジャー

上記の例では参加者が4人であるものの、同一サービス、同一事業所の参加者は複数人参加しても1とカウントされるため要件を満たしていません。

カンファレンスの要件を満たさない例C
  • 入院先医療機関の医師、訪問看護ステーションの看護師、通所介護の看護師、ケアマネジャー
  • 入院先医療機関の医師、訪問診療の医師、通所リハビリテーションの理学療法士、ケアマネジャー

上記の例では参加者が4人であるものの、訪問看護ステーション以外の看護師やリハビリ職は参加者にカウントされないため要件を満たしていません。
ただし保険者によってはカウントする可能性もあるため、確認してみてもいいかもしれません。

やぴぃ

こんな感じだから医療機関からの退院だと、ⅠロとⅡロ、Ⅲを算定する場合は訪問診療、訪問歯科、居宅療養管理指導、訪問看護などのうち2つ以上サービスを利用する人じゃないとハードルが高いよっ!

なお参加者について正式には「第一医科診療報酬点数表の退院時共同指導料2の注3を満たすもの」と定められているため、より正確な内容は下記サイトをご覧ください。

長岡市の資料も非常に分かりやすくまとめられているため、ぜひご覧ください。

介護保険施設の開催するカンファレンスの参加者

介護保険施設とは介護福祉施設(特養)、介護老人保健施設、介護医療院のことです。
また便宜上、この記事では地域密着型介護老人福祉施設も介護保険施設に含めて解説しています。

介護保険施設で開催されるカンファレンスの参加者は、次の要件を満たしている必要があります。

本人、家族介護保険施設側在宅支援側
参加者本人または家族人員基準内で配置されている者居宅介護支援事業所のケアマネジャー
必要人数1人以上1人以上1人以上

上記の表から分かるように、介護保険施設での退所前カンファレンスの参加者の要件は、医療機関からの退院よりも要件が易しいです。

この参加者に加え、利用者が退所後、福祉用具の貸与が見込まれる場合には「福祉用具専門員居宅サービスの作業療法士などの参加すること」と定められています。

このカッコ内の文言については、保険者確認が必須です。

福祉用具貸与が見込まれる場合には「福祉用具専門員居宅サービスの作業療法士などが参加していなければ退所前カンファレンスの要件を満たさないのか」

福祉用具貸与が見込まれる場合でも「上記の表の参加者だけで退所前カンファレンスの要件を満たすのか」

どちらにも解釈できる文言であるため、保険者の判断にバラつきがあるかもしれません。
文言的にも個人的には前者のような気もしますが…

よろしければ皆様も、下記のサイトをご覧になって一度考えてみてください。

ここからは、医療機関と介護保険施設の職員を医療機関等の職員と記載しています。

退院退所加算を算定するための必要書類は何がありますか?

医療機関等の職員から情報提供を受けた記録が必要となります。

具体的には退院・退所情報記録書の項目を最低でも具備した記録と、情報提供を受けた日時、場所などを詳細に記録した介護支援経過がそれに当たります。

Ⅰロ、Ⅱロ、Ⅲを算定する場合にはカンファレンスの記録も必要です。

カンファレンスの記録は介護支援経過への記載でもいいのですか?

問題ありません。
またサービス担当者会議の要点(第4表)を活用してもよいとされています。

カンファレンスの記録は、利用者や家族への交付を忘れず行いましょう。

退院・退所情報記録書は医療機関等の職員に書いてもらえないのですか?

書いてもらってもOKです。

ただ基本的にケアマネジャーが情報提供を受けて自ら記入することが前提とされています。そのためケアマネジャーが医療機関等職員に「これ書いてください」と依頼するのは不適切だと台東区は回答しています。

退院・退所情報記録書への記載は医療機関等側にメリットがないため、ケアマネジャーが書くのが無難です。

情報提供はFAXやメールで看護サマリー等を送ってもらうのではいけないのですか?

情報提供は医療機関等の職員と対面で面談が要件となっています。そのため対面で面談せずにメール等で情報提供を受けただけでは退院退所加算の算定要件を満たしません。

対面で面談した後に「あとでサマリーを送りますね」といった形でメール等で情報提供を受けるのはOKです。その場合、情報提供を受けた回数を2回としないよう注意してください。

医療機関や介護保険施設以外の場所で当該職員と面談して情報提供を受けた場合も1回にカウントしますか?

保険者の確認が必要な内容です。というのも、情報提供の記録は「ケアマネジャーが病院等に赴き、情報を得て記載することを想定しているもの」と台東区の居宅介護支援Q&Aに記載があります。
よってケアマネが赴き情報提供を受けることが想定されており、医療機関等の職員が居宅介護支援事業所に赴き情報提供を行うことは、保険者によっては1回にカウントしない可能性があります。

ちなみに筆者の勤務地では1回とカウントします。

退院・退所前に行った家屋調査を情報提供を受けた回数にカウントできますか?

医療機関等の職員が同席していた場合、1回とカウントできます。

退院後に受けた情報提供は情報提供を受けた回数にカウントできますか?

退院、退所後7日以内に受けた情報提供であれば回数にカウントできます。

医療機関等の職員が同席する退院・退所前に行った家屋調査をカンファレンスとして扱うことは可能ですか?

カンファレンスの参加者の要件を満たしていれば可能かもしれませんが、保険者の確認無しにカンファレンスとして扱うのは非常にリスキーです。

退院・退所前カンファレンスをサービス担当者会議として扱うことも可能ですか?

保険者確認が必要な内容です。台東区の居宅介護支援Q&Aではサービス担当者会議として認められる構成員であれば、サービス担当者会議として扱うことも可能としています。
この場合、退院・退所前カンファレンス兼サービス担当者会議となります。

1月1日に利用者が退院しましたが、サービスは2月1日から利用予定です。退院退所加算はいつ算定するのですか?

加算はあくまでも付属品。居宅介護支援費を算定していなければ単独で算定することができないため、この場合は2月に算定します。

1月1日に利用者が退院しましたが、サービスは3月1日から利用予定です。まだ退院退所加算は算定できますか?

退院日が属する月の翌月末までが期限ですつまりこの場合、退院退所加算を算定することはできません。

平成21年4月改定関係Q&A(Vol.1)に根拠があるので、よろしければご覧ください。

情報提供を受けていましたが、利用者が退院前に亡くなりました。退院退所加算は算定できますか?

できません。退院後サービスを利用していなければ居宅介護支援費を算定できないためです。

入院中のA病院から情報提供を受けた数日後、B病院に転院しB病院からも情報提供を受けました。A病院の情報提供は、情報提供を受けた回数に含められますか?

含まれます。つまりこの場合、情報提供を受けた回数は2回となります。

ただし転院前のA病院からの情報提供、B病院の情報提供は無しとなると、退院退所加算は算定できない可能性があります。保険者に要確認です。

平成24年度介護報酬改定に関するQ&A(vol.3)に根拠があるので、よろしければご覧ください。

退院退所加算の算定を算定しようとすると、居宅サービス計画・記録の作成やカンファレンスの参加、情報提供を受けたりと業務が多忙になりやすいです。

また、カンファレンスの参加者の要件や、算定に関する細かな要件を都度確認すると、それだけで多くの時間が取られかねません。

そのため可能な限り算定要件を覚えておくことをおすすめします。

算定できる単位数は比較的大きいため、経験の少ないケアマネジャーもこの記事を参考にぜひ算定してみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

ケアマネでまんねん運営者
主に問題の作成と解説作成担当。
ケアマネジャー試験の独学による学習をサポートし、みなさんが最短で合格するため、実践問題や一問一答、解説について書いています。

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