はじめに
ケアマネジャーとして仕事を行うにあたって、介護保険制度は最も重要となる法制度です。
まずは介護保険の大元である、社会保険と社会保障について触れていきましょう。
1.社会保障と社会保険
社会保障
社会保障は、公的扶助、社会福祉、社会保険の3つの制度からなります。
それぞれ、以下のようなものが当てはまります。
公的扶助 | 生活保護 |
社会福祉 | 保育・児童福祉、母子・寡婦福祉、高齢者福祉、障害者福祉 |
社会保険 | 介護保険、医療保健、年金保険、雇用保険、労災保険 |
上記から分かるように、介護保険は社会保険の1つです。
社会保障の財源は、社会保険料を主に使う社会保険方式と、公費(税金)を主に使う社会扶助方式に分類できます。
社会保障の給付の仕方は、金銭で支払う金銭給付と、物やサービスで支払う現物給付に分類できます。
介護保険は、基本的には現物給付の方式です。
社会保険方式 | ・主な財源が保険料 ・介護保険、医療保険、年金保険、雇用保険、労災保険がある ・財源が不安定になりやすい |
社会扶助方式 | ・主な財源が税金 ・生活保護、高齢者福祉、児童福祉、障害者福祉などが含まれる ・財源が安定しやすい |
社会保険
日本の社会保険は以下の5つの種類があります。
介護保険 | 要介護・要支援状態となることで給付。 介護サービスが主に現物給付で提供される。 |
医療保険 | 業務外の要因による疾病や怪我で給付。 医療サービスが主に現物給付で提供される。 |
年金保険 | 老齢・障害・死亡で給付。 年金が金銭給付で支給される。 |
雇用保険 | 失業時に給付。 金銭給付で失業手当や再就職手当が支給される。 |
労災保険 | 業務上の疾病や怪我、障害や死亡で給付。 医療の現物給付や、年金の金銭給付が行われる。 |
また社会保険は、多様な種類が存在します。以下のように分類することができます。
・被保険者の属性により、被用者保険と自営業者保険
・保険者の所属により、職域保険と地域保険
・保険料と給付の関係により、長期保険と短期保険
介護保険は、市町村区域内の住民を被保険者とし、市町村を保険者とする地域保険であり、保険料収入を基本的に当該年度の給付費用に充て、給付の要件や金額は原則として加入期間と無関係である短期保険です。
また、資格要件を満たした場合には、手続き無しで強制的に被保険者となる性質があります。
確認テスト
問1 社会扶助方式の財源は税金(公費)が中心である。
問2 介護保険は長期保険に分類される
問3 生活保護制度は公的扶助に含まれる
2.介護保険制度の概要
介護保険制度導入の背景
・高齢化の進展に伴い、要介護高齢者の増加、介護期間の長期化など、介護ニーズはますます増大。
厚生労働省
・一方、核家族化の進行、介護する家族の高齢化など、要介護高齢者を支えてきた家族をめぐる状況も変化。
・従来の老人福祉・老人医療制度による対応には限界。
基本的な考え方
1. 自立支援 → 高齢者の介護を単にするだけでなく、自立支援を促す。
2. 利用者本位 → 利用者の選択による契約やサービスの決定。
3. 社会保険方式 → 給付と負担の関係の明確化。
目的(介護保険法第1条)
この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。
厚生労働省
黄色線の部分は過去のケアマネジャー試験でも問われたよっ
基本理念(介護保険法第2条)
介護保険は被保険者が要介護状態または要支援状態になったとき、保険給付が行われる仕組みになっています。
保険給付に係る基本理念は以下の通りです。
1. 要介護状態等の軽減又は悪化の防止
2. 医療との連携に十分配慮して行われなければならない
3. 被保険者の選択に基づく
4. 可能な限り居宅で、有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように配慮する
5. 総合的かつ効率的に提供されるよう配慮
介護保険の保険者(介護保険法第3条)
介護保険の保険者は、市町村および特別区です。
保険者は、介護保険に関する収入及び支出について、政令で定めるところにより、特別会計を設けなければならないと規定されています。
「政令」で定めるところにより「特別会計」を設ける、は必ず覚えておこうっ
国民の努力義務(介護保険法第4条)
介護保険法第4条は、介護保険に関する事柄というより国民が努力しなければならないことが記載されています。
1. 国民は、自分が要介護状態とならないよう予防する
2. 加齢に伴って生ずる心身の変化を自覚して常に健康の保持増進に努める
3. 要介護状態になっても、有する能力の維持向上に努める
4. 国民は、共同連帯の理念に基づき介護保険事業に必要な費用を公平に負担する
確認テスト
問 介護保険法第1条に規定される文言について正しいものはどれか。3つ選べ。
1. 被保険者の選択に基づく
2. 国民の共同連帯の理念
3. 国民の保健医療の向上及び福祉の増進
4. 要介護状態等の軽減又は悪化の防止
5. 尊厳を保持
ここまでがケアマネジャー試験で出題される可能性が高いポイントです。
社会保険制度や介護保険法に関しての一問一答問題や実践問題も掲載していますので、ご活用ください。
一問一答
実践問題
ここからはケアマネジャー試験に出題されたことがないけど、今後出題されるかもしれないポイントだよっ。勉強に余裕があったら目を通してみてねっ。
認知症に関する施策の総合的な推進等(介護保険法第5条の2)
介護保険法第5条は、「国および地方自治体の責務」について書かれています。5条の2はそのなかでも「認知症」に焦点を当てた内容が書かれています。
1. 認知症に対して国民の関心や理解を深め、認知症の人への支援が適切に行われるよう、認知症に関する知識の普及及び啓発に努める
2. 認知症の予防、診断及び治療並びに認知症の人の心身の特性に応じたリハビリテーション及び介護方法に関する調査研究の推進
3. 地域における認知症の人への支援体制を整備
4. 認知症の人を介護する人の支援と、認知症の人の支援に関係する人材の確保及び資質の向上を図る
5. 認知症の人とその家族の意向の尊重に配慮し、認知症の人が地域社会において尊厳を保持しつつ他の人々と共生することができるように努める
絶対に抑えておきたいポイントとしては、「認知症に対しての国民への理解・関心を深める」ことと、「認知症の人が尊厳を保ちながら地域の人と共生する社会の実現」です。
記事では簡単にまとめていますので、正確な文言はこちら(厚生労働省HP)からご覧ください。